“遅いMicrosoft 365”の真犯人、残念な「社内ネットワーク」が招く2つの問題クラウド時代のネットワーク最適化【第1回】

クラウドサービスの利用はもはや当たり前の選択肢になりました。ただしクラウドサービスへの移行に伴う社内ネットワークの問題は、まだ広く認識されているとは言えません。どのような問題があるのでしょうか。

2020年07月15日 05時00分 公開
[川畑勇貴, 由原亮太ネットワンシステムズ]

 業界を問わずクラウドサービスを採用する動きが活発化しています。以前は“社外秘”情報の取り扱いに関するセキュリティリスクを敬遠していた企業の間でも、徐々にクラウドサービスの利用が広がり始めました。「導入が簡単」「社外からでも利用できる」といったクラウドサービスならではの利便性はもちろんのこと、クラウドベンダーのセキュリティ強化の取り組みに関する理解が広がってきたからだと言えるでしょう。

 オフィススイートをGoogleの「G Suite」やMicrosoftの「Microsoft 365」(旧「Office 365」)といったSaaS(Software as a Service)に切り替えた企業は少なくありません。業務アプリケーションを動かすインフラとして「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)などのIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)を採用する動きも広がっています。クラウドサービスは、企業にとって当たり前の選択肢になりつつあるのです。

 クラウドサービスの利用が浸透する一方で、見落としがちな点があります。LANやWANといった社内ネットワークが従来のまま取り残されていることです。クラウドサービスの利用を考慮して社内ネットワークを構築していないために、クラウドサービスの快適な利用が阻害されてしまうことは少なくありません。この弊害を回避するには、クラウドサービスの利用とともに、社内ネットワークの最適化も検討することが重要です。

 本連載は、クラウドサービスの利用拡大で発生する社内ネットワークの課題やその対策などを紹介します。まずは企業の主要なデータセンター(以下、中央データセンター)にデータが集中する、従来型の一般的な社内ネットワークでクラウドサービスを利用した場合、どのような問題が生じるのかを解説します。

意識する必要がなかったトラフィック

 従来型の社内ネットワークは、中央データセンターを中心とした「一極集中型」と言えます。この構成において各事業拠点のエンドユーザーがインターネットにあるテキストや動画といったコンテンツを閲覧したり、Webサービスを利用したりする場合、データは事業拠点から中央データセンターを経由してインターネットに出ていきます(図1)。

画像 図1 クラウドサービス導入前の社内ネットワーク《クリックで拡大》

 中央データセンターをあらゆるデータ伝送の中継点にして、中央データセンターの内部と外部を厳密に区分するのが、従来型の社内ネットワークです。1カ所のゲートウェイ(社内ネットワークとインターネットをつなぐ出口)で、外部向けの全てのデータ伝送に対して、ファイアウォールによる制御やログの監視ができるメリットがあります。

 企業がこうした従来型の社内ネットワークのままクラウドサービスの利用を拡大させた場合に、発生する問題は何でしょうか。

問題1:膨大なトラフィック

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 株式会社ソラコム

IoTデバイス導入ガイド:概念から選定・導入時に押さえておきたいポイントまで

IoTという言葉は知っているものの、ビジネスの場でどのように活用すればよいのか分からないという声も多い。こうした声に応えるべく、IoTの基本的な概念から、IoTデバイスの選定・導入時に押さえておきたいポイントまでを解説する。

市場調査・トレンド 株式会社ソラコム

今さら聞けない「DXとIoT」、基本知識から最初の一歩を踏み出す具体策まで解説

DXやIoTという言葉は知っているものの、それが何を意味し、ビジネスの現場にどのように採り入れられているのか分からないという声は意外と多い。そこで、DXとIoTについて、基本知識から実現方法まで詳しく解説する。

製品資料 アルテリア・ネットワークス株式会社

VPNの「パフォーマンス」や「セキュリティ」の課題を解決するための秘策とは?

インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。

製品資料 東京エレクトロン デバイス株式会社

ネットワーク環境の課題を解決し、ネットワークの構築と運用を簡素化する方法

ネットワークに関して、「環境の構築・運用管理に手間やコストがかかる」などの課題を抱える企業は多い。そこで注目されているのが、1つのプラットフォームによる管理で運用負荷低減やトラブル対応効率化を実現するソリューションだ。

事例 東京エレクトロン デバイス株式会社

仮想化技術でマルチテナント型の大規模ネットワークを構築、事例に学ぶ実践術

現代のネットワークには組織ごとに多彩なニーズが求められる。それらに応えるためのネットワーク環境を構築するには大きな手間がかかる。本資料では仮想化技術の採用でマルチテナント型の高速ネットワーク環境を構築した事例を紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事