ガラス、セラミック、そしてDNA 「ストレージの戦国時代」が始まる激変するテープの今とこれから【後編】

近年、ストレージのイノベーション(技術刷新)としてガラスやセラミック、DNAにデータを保存する技術の開発が進んでいる。これらはテープの市場にどのような影響を与えるのか。

2024年05月27日 08時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

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管理者 | インフラ | ストレージ


 ストレージがさまざまな進化を遂げている。ガラスやセラミックにデータを保存する近未来的なストレージが登場している。DNA(デオキシリボ核酸)に着眼し、DNAの仕組みをストレージに取り入れる動きもある。そうした中、“古き良きストレージ”である「テープ」には生き残る余地があるのか。ガラスやセラミック、DNAを使ったストレージと、これらの新技術がテープ市場に与える影響を考える。

ガラス、セラミック、DNAでテープ市場はどう変わるのか

 テープの競合になり得るのが、ガラスを使ったストレージだ。Microsoftは石英ガラスにデータを保存するプロジェクト「Project Silica」を推進している。このプロジェクトでは、フェムト秒レーザー(超短パルスレーザー)を使って石英ガラスにデータを書き込む実証実験が進んでいる。

 ストレージベンダーCeramic Data Solutions Holding(Cerabyteの名称で事業展開)はセラミックにデータを保存する技術を開発しているところだ。セラミックは熱や湿気、腐食、紫外線、放射線などに強く、耐久性に優れている。Cerabyteはドイツに本社を置く新興企業だ。同社共同設立者兼CMO(最高マーケティング責任者)のマーティン・クンツェ氏によると、セラミックは耐久性があり、ストレージの交換サイクルが長くなるという利点が見込めるため、更改の費用や作業時間を抑えやすいという。

 クンツェ氏が指摘するテープの弱みの一つは、テープ部品を製造している会社が少ないことだ。もしそれらの会社が経営破綻などで姿を消せば、テープの交換が難しくなる。「テープには“古い印象”が付いて回る」とも同氏は語り、若い世代のIT担当者がテープに魅力を感じず、違うストレージ技術に目を向ける可能性があると指摘する。

未来のストレージ、「DNAストレージ」とは

 ストレージ技術開発を手掛けるIridiaは、DNAの仕組みを用いるストレージ「DNAストレージ」の開発を進めている。同社CEO(最高経営責任者)のムラリ・プラハラード氏によると、DNAは約35億年の人類史の中、情報を保存するために完璧な“媒体”であることを示し続けてきた。Iridiaは将来、DNAストレージを製品化してサービス型で販売する計画だという。

 プラハラード氏によると、DNAストレージには、セラミックを使ったストレージと同様に耐久性が見込める。同氏はDNAストレージには将来的な需要があると見込んでいるが、「テープに完全に取って代わるものではなく、補足的な存在になる」と展望する。

 BiomemoryもDNAストレージを手掛ける企業だ。同社共同設立者兼CEOのエルファン・アルワニ氏は、企業が保有するデータが増える傾向にあることを受けて、「既存技術に依存しない新しいストレージが必要だ」と語る。DNAの概念を取り入れた同社製品は、1KB当たりの価格が約1000ドルと高価だ。「将来、価格を下げて導入のハードルを下げたい」(アルワニ氏)

 「DNAストレージは長期間にわたって安価にデータを保存できるので、さまざまな可能性を秘めている」と、コンサルティング会社Dragon Slayer Consultingプレジデントのマーク・ステイマー氏は語る。一方で、現状では読み書きの速度が非常に遅いのが課題だとステイマー氏は指摘する。「この問題を解決しなければ、人工知能(AI)技術の処理も含めた大量データの活用には向かない」(同氏)


 ガラスやセラミック、DNAを使ったストレージは、テープの強力な競合製品になる可能性がある。そうしたストレージはまだ導入コストも運用コストも不透明だが、将来的にはテープを代替する可能性を秘めている。

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