過去には「終わり」を告げられたことがあるテープは、まだまだ健在だ。テープが企業向けのストレージとして古びない理由と、新たな進化を考える。
「テープ」は、基本的にはアクセス頻度の低いデータを保存するアーカイブ向けのストレージとして使われてきた。昨今は、企業におけるデータ活用が広がるのと同時に、ストレージの技術が進化している。テープの競合となるストレージが多様化し、その一方ではテープの使い方に変化が見られる。テープの利点を踏まえて、テープがどう進化し、これからどうなるのかを考える。
テープは、エネルギー消費量やコストの低さといった点において定評があるストレージだ。テープの利用はアーカイブ用途で広がってきた。コンサルティング会社Dragon Slayer Consultingプレジデントのマーク・ステイマー氏によると、大容量データを低コストで長期保存するニーズは高まりつつある。「テープを使ったアーカイブはデータ損失によるさまざまなビジネスリスクを回避しやすい」とステイマー氏は語る。
一方で、人工知能(AI)技術が台頭するなどデータ活用が広がる状況を受けて、保存しているデータに迅速にアクセスできる特性も重要になりつつある。これはテープの終焉(しゅうえん)を告げるわけではない。テープは“古き良き”技術であるとともに、近年、さまざまな進化を遂げてきた。「テープは常時利用するデータのストレージとしても活用できる」。そう指摘するのは、米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)アナリスト、クリストフ・バートランド氏だ。
磁気テープは1950年代に登場して以来、さまざまな組織がストレージとして採用してきた。HDDやSDDといった他のストレージと併せて、テープは企業のデータ保管を支えるストレージの一つとなっている。2024年現在は、企業が利用するテープには「LTO」(リニアテープオープン)と、「IBM 3592」という種類がある。IBMが提供するテープ製品はデータ容量が圧縮時で150TBまで増えている。
テープはさまざまな進化の一つとして、データをオブジェクト(メタデータを含むデータの単位)で保存できるようになった。ストレージベンダーSpectra Logicのシニアディレクター、マット・ナインスリング氏は、「テープは時代のニーズをくみ取る適応性があることを証明し続けている」と指摘する。
中編は、テープと光ディスクの“共存”を考える。
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