Intelはデータセンター向けCPU「Xeon 6」新モデルで何を目指すのか。価格転換と専用アクセラレーターで、Intelは再び主導権を握れるのか。
半導体ベンダーIntelのサーバ向けCPU「Xeon 6」の新たなモデルは、CPUとGPU(グラフィックス処理装置)を組み合わせたAI(人工知能)システムや、複数のCPUを搭載できるマルチソケットサーバの仮想化といったデータセンターのニーズに応える製品だ。プロセッサ競合ベンダーとのシェア争いが激しさを増す中で、アナリストによるとIntelはある製品戦略に打って出ている。
Intelは2025年2月24日(現地時間)、データセンター向けCPU「Xeon 6」のP-cores採用のモデル「6700」と「6500」シリーズを発表した。P-cores(開発コードネームGranite Rapids)とは、パフォーマンスコアを意味し、高クロック動作やマルチスレッド対応など、大規模企業向けアプリケーションに適した高速処理が可能な設計となっている。
J.Gold Associatesのアナリスト、ジャック・ゴールド氏によると、AIアプリケーションを実行するサーバ向けに、より高性能なXeon 6プロセッサが求められていたという。これまで、Intelのハイエンド向けXeon 6プロセッサは、P-cores採用「6900」シリーズとE-cores採用モデルのみだった。E-coresは省電力重視で、P-coresよりも消費電力が少ない。ゴールド氏は「AIの進化に伴い、より高性能なプロセッサが求められていた。P-coresがその役割を担う」と述べる。
P-cores採用6700と6500は、4ソケットや8ソケット以上のマルチソケットサーバ向けに設計されており、データベースシステム「SAP HANA」や「Oracle Database」のインメモリデータベースなど、大量のデータをリアルタイムに処理するシステムでの活用が想定されている。
半導体ベンダーはAI処理にGPUを使用することが多いが、IntelはXeon 6のP-cores採用モデルに、AI処理やデータ分析、ネットワークセキュリティ、ストレージ向けのアクセラレーターエンジンを組み込むことで、競合製品との差別化を図っている。
企業は、GPUで駆動するAIシステム内のタスクの管理と調整にCPUを使用できる。CPUは、データの前処理やメモリ管理を担い、インターコネクト規格「Compute Express Link」(CXL)などの相互接続を活用してGPUと通信する。
市場競争の激化を背景に、IntelはCPUを値下げしている、と米Informa TechTargetの調査部門Omdiaのアナリストであるアレクサンダー・ハロウェル氏は言う。これまでのXeonプロセッサは、半導体ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)のサーバプロセッサ「AMD EPYC」やNVIDIAの省電力GPU「NVIDIA L4」と同水準の価格帯だった。
「AMDは価格面でIntelに対して優位に立っていたが、最近になって最新CPUの開発コスト増加や利益率向上のため、価格を引き上げた」とハロウェル氏は言う。「Intelは市場シェアを維持するため、価格設定を見直している」
IntelはXeon 6のSoC(システムオンチップ)モデルも発表した。Xeon 6 SoCには、仮想無線アクセスネットワーク(vRAN)向けのアクセラレーターが統合されており、動画配信などのメディアサービス向けの「Media Transcoder Accelerator」も搭載されている。
vRANは、従来の無線アクセスネットワーク(RAN)を仮想化したもので、スマートフォンなどのモバイルデバイスを通信システムのコアネットワークに接続する役割を持つ。「5G」(第5世代移動通信システム)のネットワークにおいて、従来の専用ハードウェアに代わる技術として採用が進んでいる。
「Xeon 6 SoCは、IntelがNVIDIAやAMDと競争する上で不可欠な製品だ。ユーザー企業に新しいプロセッサへの移行を促すには、他社製品への切り替えよりもアップグレードの方が容易だ」(ゴールド氏)
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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