SNSの「ネットワークエンジニアリングを再びクールに」運動が、実は切実な理由ネットワークエンジニアリングの未来【前編】

最近のSNSでは、ネットワークエンジニアリングの普及に向けた動きがある。一部のネットワークエンジニアたちが真剣に普及に取り組んでいるからだ。彼らは何を考えているのか。

2025年04月03日 05時00分 公開
[Jennifer EnglishTechTarget]

関連キーワード

ソーシャル | ネットワーク


 ネットワークエンジニアなら、ソーシャルメディアを使っているときに、ハッシュタグ「#MakeNetworkingCoolAgain」(ネットワークエンジニアリングを再びクールに)というフィードやタイムラインを見たことがあるかもしれない。

 こうした動きの背景には、ネットワークエンジニアたちが抱くある危機感があった。

熟練のネットワークエンジニアが抱く危機感とは

 ネットワークエンジニアリングが存在しなければ、インターネットは成り立たない。インターネットは画期的な情報共有の方法であり、誕生と同時にビジネスに革命をもたらした。今でも数多くの革新的なテクノロジーの基礎となっている。

 しかし、サイバーセキュリティ、プログラミング、AI(人工知能)といった新しい技術分野の発展と共に、ネットワークエンジニアリングは、地味で退屈な技術分野と見られるようになってきた。少なくとも学生たちは、これからの自分のキャリアについて考えるとき、そう考えている。

 ほとんどのネットワークエンジニアは、ネットワークエンジニアリングは今でもクールな、イケてる技術分野だと考えるだろう。しかしさまざまな領域のエンジニアに対する給与額、目に飛び込む広告やニュース記事を見ると、他の技術分野の方が人々の関心を引いていることは確かだ。

 ネットワークエンジニアでありコンテンツクリエイターでもあるアレクシス・バーソルフ氏によると、近年は以下の傾向が大学で起きている。

  • 大学のネットワークエンジニアリングの授業が時代遅れの内容になっている
  • ネットワークエンジニアリング分野のインターンの数が減少している
  • そもそもネットワークエンジニアリング自体が広く知られていない

 結果として、ほとんどの学生はネットワークエンジニアリング分野に進もうと考えない。「給与の良いクラウド分野とサイバーセキュリティ分野は、人材需要も学生からの人気も高い」とバーソルフ氏は語る。「販売やマーケティングの観点から見ても、クラウドベンダーやセキュリティベンダーの活動は活発だ。当然、学生たちにも馴染み深い存在になっている」

 バーソルフ氏を含むネットワークエンジニアたちは、ソーシャルメディア、動画、ブートキャンプ、オンライントレーニングを通じて、人々のネットワークエンジニアリングに対する関心を高めたいと考えている。

 例えば、バーソルフ氏は、日常生活でどのようにネットワークエンジニアリングが活用されているかが分かるショート動画を制作している。ネットワークエンジニアリングと、それがどのように活用されているかを幅広い層の人たちに知ってもらうために動画制作を始めている。「学生たちがインターネットの情報を基に進路を決める傾向がますます強くなっているので、自分の仕事を愛し、学生たちにこの分野に進んでほしいと願うエンジニアなら、そのためのコンテンツを制作する責任がある」とバーソルフ氏は語る。

 「2年生のクラスで話したことがあるが、約92%の子供たちが『ミスタービースト』(米国のYouTuber)のようなインフルエンサーになりたいと言った」と、バーソフル氏は語る。「当然だ。学生たちはみんな『YouTube』で、動画を作ってお金を稼ぐYouTuberを見ているからだ」

 Amazon.comの創業者であるジェフ・ベゾス氏が設立した航空宇宙企業Blue Originのネットワークエンジニアであるレキシー・クーパー氏も、「TikTok」などのソーシャルメディアでtracketpacerの名前で活動している。「面白くてバカバカしいTikTok動画を使って、ネットワークエンジニアリングへの若者の関心を高め、仕事として選択肢に入れてもらいたい」とクーパー氏は話す。

 クーパー氏によると、ネットワーク業界には外部からの協力が不足している。例えばハリウッドだ。「誰もネットワークエンジニアが登場する『Mr. Robot』(ハッカーを主人公とした人気ドラマ)を作っていない。だが作るべきだ」とクーパー氏は語る。「ネットワークエンジニアリング分野の、いろいろな職種の人を表現したコンテンツがあれば、技術系でない人々にもネットワークエンジニアリングについて興味を持ってもらえるはずだ」

 TikTok動画やソーシャルメディアへの面白い投稿によって、ネットワークエンジニアリングについて認知を広めることができるはずだ。#MakeNetworkingCoolAgain運動は一見軽薄に見えるが、さまざまなコミュニティーに対して、ネットワークエンジニアリングをより身近なものにしたいというネットワークエンジニアたちの願いが込められている。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VPNが「もはや時代遅れ」であるこれだけの理由

VPN(仮想プライベートネットワーク)は、セキュリティの観点から見ると、もはや「安全なツール」とは言い切れない。VPNが抱えるリスクと、その代替として注目されるリモートアクセス技術について解説する。

製品資料 アルテリア・ネットワークス株式会社

VPNの3つの課題を一掃する、次世代インターネットVPNサービスの実力

インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。

製品資料 株式会社インターネットイニシアティブ

自治体がMicrosoft 365を利用する際に検討したい、専用回線の導入という選択肢

企業だけではなく自治体でもクラウド活用が進んでいる昨今。中でも業務利用が多いMicrosoft 365には、Microsoft Teamsなど高速かつ安定した回線を必要とするサービスがある。それらを快適に利用するにはどうすればよいのか。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

ファイアウォールとVPN中心のセキュリティアプローチは危険? 4つの理由を解説

代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

複雑化したネットワークシステム、クラウド並みのアジリティを確保するには?

顧客や従業員のエクスペリエンスを向上させるとともに、インベーションを促進するには「アジリティ」の強化が鍵となる。しかし昨今、組織のネットワークは複雑化が著しく、アジリティの確保すら難しい。そこで求められるのが「簡素化」だ。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...