米国が覇権争いに本気? 巨額のAI投資計画「Stargate」に抱く野望AI競争を制するのは誰か【前編】

米国のトランプ新政権は、5000億ドルを投じるAI投資計画「Stargate」を発表した。プロジェクトが打ち出された背景や狙い、今後の施策を解説する。

2025年04月02日 08時00分 公開
[Madeleine StreetsTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | イノベーション


 2025年1月21日(米国時間)、米国政府はAI(人工知能)プロジェクト「Stargate」を発表した。これは米国のAIインフラを強化するための大規模な取り組みで、AI研究機関OpenAIをはじめとする民間企業が中心となり、今後4年間で総額5000億ドルを投資する計画だ。プロジェクトが打ち出された背景や狙い、今後の施策を解説する。

米国が覇権争いに本気? 巨額のAI投資計画「Stargate」とは

 Stargateプロジェクトが発表されたのは、ドナルド・トランプ大統領の就任直後のタイミングだった。トランプ氏は就任後の数週間で、暗号資産に関する大統領令を含む複数のテクノロジー関連の大統領令に署名。さらに、欧州連合(EU)が大手IT企業の活動を規制する「デジタル市場法」(DMA)に対する不満も表明した。

 プロジェクトの目標は、OpenAIの既存のAIインフラを拡張することにある。近年AI競争が激化する中で大規模なAIインフラの整備が必要とされており、Stargateはこの課題に対処することを目指している。全米各地に大規模データセンターを建設し、AIモデルの学習や運用を支える環境を整備する計画だ。

 Stargateプロジェクトは単なるデータセンター建設にとどまらず、米国をAI分野の世界的リーダーにすることも目指している。OpenAIはプロジェクトについて、「米国の再工業化を支援するだけでなく、米国およびその同盟国の国家安全保障を守る戦略的能力を提供する」と説明している。トランプ大統領は「史上最大のAIインフラプロジェクト」と表現しており、その国際的な影響力への期待も高まっている。

 Stargateプロジェクトは、OpenAIを中心とする複数の民間企業による共同運営で進められる。OpenAIが運用面での責任を、ソフトバンクは財務面での責任を負う。技術パートナーにはMicrosoft、NVIDIA、Oracle、Armが名を連ねる。コンピューティングシステムの設計と運用は、OpenAI、Oracle、NVIDIAが担当。5000億ドルの投資のうち、最初の1000億ドルはソフトバンク、OpenAI、Oracleの他に投資会社MGX Fund Managementが出資する。

 これらの公式パートナーに加えて、Stargateはデータセンター建設に関わるパートナーを募集している。対象となるのは、不動産企業、電力供給会社、建築・エンジニアリング企業などで、今後のプロジェクトの進行に応じてさらなる企業の参画が見込まれる。

 総投資額5000億ドルのうち、具体的な配分はまだ決まっていない。まず初期投資として1000億ドルを投入し、テキサス州アビリーンに2つのデータセンターを建設するという。建設は既に開始されており、2025年末までに完成する見通しだ。プロジェクトの発表時には、AIインフラ整備による大規模な雇用創出も強調された。


 次回は、Stargateプロジェクトがもたらすメリットと懸念を解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 アルテリックス・ジャパン合同会社

AIを活用してより良いインサイトを獲得、「AI対応データ」を準備する方法

AIをビジネスで生かし、大きな成果を得るには、「AI対応データ」が必要だ。しかし、AI対応データを手に入れるためには、地道なデータ準備が不可欠となる。本資料では、AI対応データを準備するための6つのステップを紹介する。

製品レビュー 富士通株式会社

小売業の売り上げと利益を向上させる鍵、AIを活用した最適な価格設定の方法

小売業では、売り上げと利益を向上させる価格設定が重要だが、迅速かつ適切な設定は労力もかかり困難を極める。膨大な商品の需要バランスを見極め、最適な価格調整を自動的に算出することがAI活用にて実現可能だ。その次世代の方法とは。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

AIを利用して組織全体の生産性を向上させる方法とは?

生成AIの登場によって、AIを業務活用しようとする企業が増えてきている。しかし、AIをどのような形で導入すればよいのか悩んでいる企業も少なくない。本資料では組織全体にAIと生成AIを組み込む方法について解説する。

製品資料 フォーティネットジャパン合同会社

ネットワーク運用を効率化、手動の構成やトラブルシューティングを排除するには

ある調査によると手動によるネットワーク操作は、65%に上るという。ネットワークの構成やトラブルシューティングといった手動に頼っている部分をAIによって自動化すれば、運用の効率化が可能だ。本資料では、その実現方法を解説する。

製品資料 アドビ株式会社

生成AIで業務改革、PDFツールの“AIアシスタント”で何がどう変わる?

ビジネスにおける生成AI活用が進む中、日々の業務で活用するPDFツールに搭載されたAIアシスタント機能への注目度が高まっている。その活用で、どのように業務を改善できるのか。機能や特徴、期待される効果を紹介する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

米国が覇権争いに本気? 巨額のAI投資計画「Stargate」に抱く野望:AI競争を制するのは誰か【前編】 - TechTargetジャパン エンタープライズAI 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。