OpenAIの新LLM「o3」は「o1」と何が違う? なぜ「o2」は存在しない?推論は新境地へ【前編】

OpenAIの新モデル「OpenAI o3」は、従来のGPT-4oやOpenAI o1を超える存在として注目を集めている。OpenAI o3の技術革新、バージョンごとの違い、利用方法について詳しく紹介する。

2025年04月07日 07時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

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 AI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」の開発元であるOpenAIは、2024年12月に大規模言語モデル(LLM)「OpenAI o1」シリーズの一般提供を開始した。これは同社にとって初の推論特化モデルであり、推論能力を強化している点が特徴だった。

 同じタイミングでOpenAIが主催したイベント「12 Days of OpenAI」では、OpenAIのサム・アルトマンCEOがOpenAI o1の後継となる「OpenAI o3」シリーズのプレビュー版を発表。2025年1月には「o3-mini」の一般提供を開始した。

 OpenAI o3は、OpenAI o1や、従来の「GPT-4o」と何が違うのか。OpenAI o3の特徴やバージョンごとの違い、利用方法までを詳しく解説する。

「OpenAI o3」は「o1」と何が違う? なぜ「o2」は存在しない?

 OpenAI o3は、GPT-4oをはじめとする従来型モデルに比べ、より高度なタスクを処理できるよう設計されている。より深い分析的思考や問題解決、複雑な推論が求められるタスクに適しており、特に数学やプログラミングでOpenAI o1を大幅に上回る能力を示している。

 OpenAI o3の推論プロセスには、「Simulated Reasoning」(シミュレーテッド・リーズニング)という手法を採用している。これは、段階的な推論プロセスを明示する「Chain-of-Thought」(CoT:思考の連鎖)をさらに発展させたもので、LLMが回答を生成する前に自身の思考を振り返り、内省と分析を重ねてより適切な回答を導き出すプロセスだ。これにより、OpenAI o3はより高度で一貫性のある推論を実現する。

OpenAI o3のバージョン

 OpenAI o1およびOpenAI o3シリーズは、LLMの最前線である「フロンティアモデル」として位置付けられる。OpenAI o3には、以下2つのバージョンが存在する。

  • OpenAI o3
    • 全機能を備えたフルスペックモデル。最大限の性能を発揮するには、膨大な計算リソースが必要。
  • OpenAI o3-mini
    • パフォーマンスとコスト効率を重視した軽量モデル。計算負荷を抑えるために一部機能を削減しているが、推論に関するコア技術は維持している。

 OpenAI o3-miniは用途に応じた3つのバリエーションが用意された。

  • o3-mini-low
    • シンプルな推論タスク向け。最も処理速度が速い。
  • o3-mini-medium
    • 処理速度と推論の深さを両立したバランス型。
  • o3-mini-high
    • 最も高度な推論能力を持つが、出力に時間を要する。

OpenAI o3はどこから利用できる?

 当初、OpenAI o3の提供範囲は極めて限定的であり、アクセスには厳しい制限が設けられていた。初期段階では安全性テストの目的でのみ利用が可能で、テストへの参加には事前の申請と承認が必要だった。

 2025年1月31日現在、OpenAI o3-miniは以下のような方法で利用できる。

  • ChatGPT経由での利用
    • 無料ユーザー:リクエスト数の制限付きでアクセス可能。
    • 有償プラン「ChatGPT Plus」ユーザー:1日当たり最大150メッセージまで利用可能。
    • 有償プラン「ChatGPT Pro」ユーザー:無制限でアクセス可能。
  • API経由での利用
    • 開発者向けにはAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じて提供している。
    • 100万入力トークン(注)当たり1.10ドル、100万出力トークン当たり4.40ドルで利用可能。

※注:テキストデータを処理する際の基本的な単位で、英語であれば1トークンは4文字程度と考えられる。

 2025年2月時点で、OpenAI o3はAIエージェント機能「Deep Research」の一部としてのみ利用可能で、ChatGPT Proユーザーのみがアクセスできる。

OpenAI o2が存在しない理由

 新しいAIモデルが登場すると、連番で命名されるケースが一般的だ。つまり、OpenAI o1の次は「OpenAI o2」と名付けられると考えられる。しかし実際には、OpenAI o2というLLMは存在せず、OpenAI o3が登場した。

 この理由の一つとして、「O2」が英国の通信事業者Telefonica UKの登録商標であることが挙げられる。OpenAIは商標権への配慮から、「OpenAI o2」という名称を避け、代わりにOpenAI o3と命名したということだ。


 次回は、OpenAI o3の技術面についてより詳細に解説する。

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