ROIの追及が進む? 2025年に注目すべき生成AIのトレンド5選生成AIを取り巻く10大変化【前編】

生成AIの活用を業務レベルに落とし込むには、生成AIの活用法やトレンドを把握しておくことが肝要だ。生成AIに関する2025年のトレンドを5つ紹介する。

2025年03月28日 06時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

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 コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)が2025年1月に公開した調査レポート「From Potential to Profit: Closing the AI Impact Gap」によると、最高経営幹部(CxO)の75%は、2025年の戦略的優先事項の上位3つに人工知能(AI)および「生成AI」を挙げた。この結果は、BCGが2024年9~12月に実施したグローバル調査「AI Radar」で、1803人のCxOから得た回答に基づいている。

 この調査結果からは、2025年に生成AIの活用が企業戦略の柱となることがうかがえる。一方、生成AIの活用を業務レベルに落とし込むためには、活用法やトレンドを把握しておくことが必要だ。本稿は、調査レポートや専門家の意見を基に、生成AI活用に関する2025年のトレンド5つを紹介する。

2025年の生成AIトレンド5選

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1.生成AIに関するROIの追求が加速する

 2022年、AI技術ベンダーOpenAIが提供するAIチャットbot「ChatGPT」が登場し、ユーザー企業は生成AIを業務に活用するための試行錯誤を続けてきた。一方、2025年にはROI(投資対効果)を追求する企業が増加するという見方がある。

 「投資に見合う価値や収益を示せ」。IT調査会社Info-Tech Research Groupの主席リサーチディレクター、ブライアン・ジャクソン氏は「他のサービスと同様に、生成AIも投資した分、価値を生み出すことが期待されるようになった」と述べる。

 一部のユーザー企業はすでに成果を出し始めている。Google Cloudが2024年8月に公開した調査レポート「The ROI of Gen AI」によると、生成AIを使用しているユーザー企業の74%がROIを改善し、約35%は半年以内にROIを改善できる見通しだと回答した。

 生成AIの導入による測定可能な効果として、調査対象者は以下の項目を挙げる。

  • 従業員の生産性向上
  • ユーザー体験(UX)の改善
  • ユーザーエンゲージメントの改善
  • ユーザー満足度の向上

 同調査は、メディア企業Stagwell傘下の調査会社National Research Groupが、Google Cloudの委託を受けて2024年2月~4月に実施した調査に基づく。調査対象者は、売上高1000万ドル以上の企業に所属する管理職や経営層2508人だ。

2.生成AIの導入や活用はボトムアップ型で進行する

 経営幹部の中には、生成AIの導入や活用を最優先事項に挙げる人がいる。一方、ジャクソン氏は「現場の従業員が生成AIを活用し、業務をより迅速かつ効率的に遂行できるようになることが重要だ」と述べる。

 ジャクソン氏は「生成AIのROIをトップダウンで追求すると間違いを犯す可能性がある」と指摘する。同氏は「生成AIの活用を推進し、価値を見いだすことができるのは経営層だけではない」としながら、「実務に携わる従業員こそが、生成AIの有効な活用法や成果を見いだす可能性がある」と説明する。

3.非IT人材が開発者になる

 ジャクソン氏は、IT部門以外の従業員が生成AIツールを使ってソースコードを生成したり、業務の自動化や効率化を実現したりするようになることも挙げる。

 「生成AIがあれば、誰もが開発者になれる。これは重要な変化であり、その価値を見逃してはならない」(ジャクソン氏)

 ただしこうした変化は自然に起こるものではない。CIO(最高情報責任者)をはじめとしたCxOは、従業員に生成AIの使用法を教育しなければならないとジャクソン氏は指摘する。CIOが事業部門に出向いて、生成AIがどのように役立つのか、どのようなユースケースを想定するかを説明し、「私たちが生成AIで取り組むべきこと」を伝える必要がある。

4.生成AIに対する信頼の構築が必要になる

 「生成AIが普及するにつれて、生成AIに対する信頼の構築が重要になる」。セントトーマス大学(University of St. Thomas)でソフトウェアエンジニアリング、データサイエンス学部の教授兼学部長を務めるマンジート・レゲ氏は、こう述べる。

 レゲ氏は、学内で生成AIに対する信頼を醸成するために以下の取り組みを進めている。

  • 透明性の確保
    • 生成AIによる意思決定プロセスと生成AIの学習データについて明確にする。
  • 解釈可能性の確立
    • エンドユーザーが生成AIの出力を解釈したり理解したりできるようにするための手法を開発する。
  • 責任の明確化
    • 生成AIに関連する決定事項や行動に関する責任の所在を明確にする。

 レゲ氏によると、一部の経営層は生成AIに対する継続的なモニタリングを実施し、公平性や正確性を確保することで、生成AIへの信頼を高めている。

5.業界に特化した生成AIの導入が進む

 インディアナ大学ケリービジネススクール(Indiana University Kelley School of Business)の准教授、サガー・サムタニ氏によると、企業の中にはChatGPTをインストールしたままの状態で使うのではなく、業界の特定の用途にカスタマイズして使うところが出てきた。

 「2025年には、より多くの企業が自社の業界に特化した大規模言語モデル(LLM)を採用するようになる」とサムタニ氏は予測する。

 標準化団体IEEE(米電気電子技術者協会)のシニアメンバーであるビベック・ミシュラ氏は、一例として金融企業の取り組みを紹介する。一部の金融企業は、これまで蓄積したデータを学習させた生成AIを使って、投資家の意思決定を支援している。他にも、自社特有の業務プロセスを学習させたLLMを活用し、従業員のワークフローを指導するAIエージェントを作成する企業もあるとミシュラ氏は説明する。


 次回も引き続き、2025年の生成AIに関するトレンドを5つ紹介する。

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