Platform as a Serviceではない方の「PaaS」とは何か顧客価値向上にもつながる?

製品とサービスを融合させたクラウドサービス「Product-as-a-Service」が注目されている。新たなビジネスチャンスの創出や、顧客へ提供する価値向上にも効果があるという。

2025年04月15日 06時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

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 「Product as a Service」(PaaS)とは、製品そのものではなく、その製品が提供できるサービスや成果を販売するという考え方だ。この用語は、クラウドコンピューティングの普及とともに広まった「as-a-service」という表現の一種で、「SaaS」(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)などと同様にサブスクリプション型の価格設定を採用している。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の出現によって、特に製造業者に注目されている。なぜなら、製品の収益性向上、顧客エンゲージメントの改善、新規事業の立ち上げを実現する手段として活用できるからだ。

「PaaSが顧客価値を向上させる」のはなぜか

 PaaSの最も身近な例として、固定電話サービスが挙げられる。携帯電話やスマートフォンが登場する以前の形態がその典型だ。

 現代では、IoT、センサー技術、データ分析、モバイルデバイス、クラウドコンピューティングなどでPaaSの採用が進んでいる。無線やインターネット接続が手頃な価格で広く利用可能になったことで、企業は製品に各種センサーを搭載できるようになった。これによって、製品の使用状況や、温度、湿度などの信頼性に影響を与える環境要因、特定部品の故障などが監視できる。

 企業は、収集したデータに予測分析を適用して機械的な問題を特定、対処したり、顧客ニーズに応える新製品やサービスを提供する機会を見出したりできる。こうした製品やサービス、顧客関係の管理には、通常、企業向けソフトウェア、特に「ERP」(Enterprise Resource Planning)、「CRM」(Customer Relationship Management)、「PLM」(Product Lifecycle Management)が必要となる。一部のベンダーは、自社で利用するこれらのソフトウェアをPaaSプラットフォームとして明確に位置付けて販売している。

 顧客に提供できる価値や機能の種類に幅広いバリエーションを持たせることができるのが、PaaSのビジネスモデルの特徴だ。例えば、サブスクリプションモデルでは、稼働時間や生産量などの特定の成果を保証したり、企業が提供する保守、修理サービスの範囲を明確にしたりできる。また、製品そのものよりも、取得したデータの利活用に主眼を置くサービスも見られる。これによって、顧客の業務や私生活に新たな価値を提供し、長期的な関係を構築できる。

 顧客にとっては、製品所有に伴う保守の負担や投資リスクから解放されるというメリットもある。ただし、これらの利点には通常、追加コストが伴う。

 PaaSの推進者たちは、このモデルが顧客満足度を向上させながら、月次定期収入という形で企業の収益を増加させ、キャッシュフローをより安定的で予測可能なものにすると主張している。

 また、継続的なインターネット接続とサービス契約によって、企業は顧客との関係をより緊密で長期的なものにすることができる。これは製品を一括購入する場合と比べて、CRMの観点から有利だ。

 その他のPaaSのメリットとしては、カスタマーサービスと保守サポートの提供、さらに機器の回収、再生、再利用が可能になることによる環境への配慮などが挙げられる。

 一方、顧客の視点からは、「永続的な支払い」という側面が、所有して自己管理する場合と比べて障壁となる可能性がある。また、利用料を支払い続けることが単純にコスト高になると判断する顧客もいるだろう。

 顧客がサービスの契約内容を変更したり解約したりできる柔軟さは、PaaSモデルを利用する上でのメリットだ。しかしこのメリットはサービス提供者にとっては望ましいものではない。顧客の解約が増えれば顧客維持率は低下し、収益に影響を与える可能性がある。

 固定電話以外にも、さまざまな企業がPaaSモデルを採用している。

 Xerox Holdings Corporation(Xeroxの名称で事業展開)は長年にわたり、プリンターやコピー機をサブスクリプション方式で提供してきた。顧客は機器の使用料を支払い、Xeroxが保守とサポートを提供する。EpsonやBrotherといった競合他社も、プリンター、コピー機、その他のオフィス機器で同様のリース契約を提供している。

 家具のサブスクリプションサービスもある。CORT、CasaOne、Aaron's、Fernishなどの主要企業が、家具のレンタルやレンタル購入の選択肢を提供している。また、Groverは、スマートフォン、ノートパソコン、ゲーム機などの家電製品をさまざまな契約期間でレンタルできるサービスを提供している。このPaaSモデルによって、顧客は最新の機器を購入せずに利用できる。

 PaaSの市場は堅調に成長を続けており、製品やサービスの購入に代わる重要な選択肢となっている。顧客は必要な期間だけ製品やサービスを利用し、不要になれば返却できる。

 現在の主要なトレンドは以下の通りだ。

  1. クラウドサービスの影響:複数のクラウドサービスを組み合わせることで、より適応性と柔軟性の高いクラウド環境を実現している。
  2. 国際的な成長:PaaSはグローバルに拡大し、企業や消費者にとって重要な選択肢として認識され、ベンダーの市場機会を拡大している。
  3. 使用量ベースの課金モデル:固定月額料金から、実際の使用量に基づく価格設定へと移行しており、サービスのコストと価値、効率性の整合性を高めている。
  4. AI(人口知能)の活用:PaaSを提供する企業は、さまざまな性能指標の分析、財務分析、価格設定に関するガイダンス、サポートなどにAIを活用している。

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