RISE with SAPの利用を一つの条件に、SAPがオンプレミス型ERP「SAP ERP Central Component」の保守サポートの期限を延長する。ただし、条件はそれだけではない。
SAPは2025年2月4日(現地時間)、2027年に終了するオンプレミス型ERP(統合基幹業務システム)「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)の保守サポートを事実上2033年まで延長できるサービスを発表した。
サービスを利用できる条件の一つは、クラウド型ERPへの移行支援サービス「RISE with SAP」を利用することだ。大規模なオンプレミス型ERPを運用しているユーザー企業にとって朗報だと、一部のアナリストは述べる。ただし、条件はそれ以外にもある。
新サービスは「SAP ERP, private edition, transition option」と題し、大規模なSAP ECCを運用しているユーザー企業を対象としている。
利用条件はRISE with SAPの契約を結ぶことだ。クラウド型ERP「SAP S/4HANA Cloud」への移行を支援する専用サービスの他、セキュリティ、法令順守、ソフトウェアの問題に対処するパッチも提供する。ユーザー企業は2028年から購入でき、2031~2033年まで利用できる。
条件は他にもある。2030年末までにインメモリデータベース「SAP HANA」への移行が必須になる他、プログラミング言語「Java」などのサードパーティーツールのサポート終了に対処する必要がある。新サービスはSAP ECCを主な対象としており、業務アプリケーションスイート「SAP Business Suite 7」に含まれるERP以外の製品は対象外だ。
SAPは2025年第2四半期(2025年4~6月)に、提供開始時期と料金の詳細を発表する方針だ。
同社のステファン・シュタインレ氏(カスタマーサポート・クラウドライフサイクルマネジメント責任者)は、「新サービスは、大規模なユーザー企業がオンプレミス型ERPからクラウド型ERPに移行するのを支援するものだ」と説明する。同氏は「大規模なオンプレミス型ERPを有するユーザー企業には、事前通知が必要だと理解している。移行のために、十分な期間を提供したい」と述べる。
企業分析フォーラムdiginomicaの共同創業者ジョン・リード氏によると、SAPの幹部は「クラウド型ERPへの移行を希望しているものの、時間を要するユーザー企業」に対し、現実的な移行期間を用意する必要があると認識したという。
「SAPは歩み寄る姿勢を見せた」とリード氏は述べる。「大規模なオンプレミス型ERPを運用するユーザー企業にとってクラウド型ERPへの移行は重要なプロジェクトだ。SAPが厳しい移行期限を設けることは、逆効果になりかねない」(リード氏)
ユーザー企業が移行期限の短さにプレッシャーを感じ、クラウド移行がうまくいかず、データ処理のプロセスの見直しや機能のカスタマイズを十分に実施できなくなるという懸念もある。
新サービスは、SAPのクラウド型ERPの事業成長につながるとリード氏は指摘する。ただ、対象となる全てのユーザー企業がRise with SAPを利用するとは限らない。
「SAPはユーザー企業のニーズに耳を傾けているが、それには限度がある。ユーザー企業がRise with SAP以外でクラウド移行をしたい場合、新サービスと同様の“譲歩”を得るのは難しい」とリード氏は述べる。
この他にも新サービスは、ユーザー企業が抱える課題を解決する可能性がある。次回はそうした課題を解説する。
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