AI技術の活用が進む中、さまざまな国や地域がAI規制法の制定を進めている。米国では州単位でのAI規制法の制定が進んでいる現状を、問題視する向きがある。主な州のAI規制法に関する動向と、企業にもたらす影響とは。
人工知能(AI)技術に関する規制の法整備が各国で進む中、米国ではドナルド・トランプ大統領がAI技術の安全性に関する大統領令「14110」を撤回するなど、AI技術規制を緩和している。一方、米国の一部の州は独自のAI規制法の制定を進めている。本連載は、企業のAI技術活用に影響し得る各州のAI規制法関連の動向と、AI規制法の乱立で企業が直面する問題点を整理する。
コロラド州は2024年5月、「コロラド州AI法」(CAIA:Colorado AI Act)を制定した。同法は、教育や雇用、融資、行政サービス、医療などの分野において、重要な意思決定をする、リスクのあるAI技術活用アプリケーション(高リスクAI)の開発者や提供者を規制することを目的としている。AI技術の開発者と提供者双方を包括的に規制する米国初のAI法案となった。
高リスクAIを導入する企業に対しては、導入による影響の評価、リスク管理方針とAI技術活用アプリケーションの監督および規制を実施するための体制の整備を義務付けている。CAIAの施行開始時期は2026年2月だ。
調査会社Gartnerのアビバ・リタン氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデント兼アナリスト)によると、CAIAは欧州連合(EU)が2025年2月から段階的に施行する「AI法」(Artificial Intelligence Act)の要件を取り入れている。EUのAI法は、AIシステムをリスクの程度で分類し、その程度に応じた要件を定める。リタン氏は「企業がCAIAの要件に直面したとき、その対処に苦労する可能性がある」と話す。
2024年9月3日(現地時間、以下同じ)、AIモデルに安全性テストを義務付ける州法案「SB 1047」がカリフォルニア州議会において賛成多数で可決した。AIモデル開発の安全基準を確立し、州技術部門内に執行機関Frontier Model Divisionを設置して企業を監督するものだ。しかし同月29日、カリフォルニア州知事が拒否権を行使したことで、審理が差し戻された。
コネチカット州の「AIに関する法律」(An Act Concerning Artificial Intelligence、通称SB 2)は、民間部門によるAI技術活用アプリケーションの開発と導入の両方に基準を定め、特定の状況や条件下でAI技術活用アプリケーションが生成したコンテンツの公開と配布を制限することが目的だ。同法は、2024年4月に同州上院が可決した。
ニューヨーク市は2023年7月、自動人事採用決定ツール(AEDT:Automated Employment Decision Tool)に関する規制法を施行した。AI技術やデータ分析などを活用して雇用を自動判断するツールであるAEDTを利用する企業に、AEDTの利用状況についての説明を義務付ける。キャシー・ホウクル知事は2024年1月、同市をAI研究と革新の拠点とすることを目指す、エンパイアAIコンソーシアム(Empire AI Consortium)の創設を発表した。
オハイオ州立大学(Ohio State University)で工学部長を務めるアヤナ・ハワード氏によると、複数の州がAI規制法案を独自に採択しており、その動きは近年加速している。
「連邦政府が主導してAI規制法の制定を進めない場合、各州は独自のルールを作り続けることになる」。2024年6月に開催された米国連邦議会上下両院合同経済委員会のAIに関する公聴会でハワード氏はこう述べた。
調査会社Forrester Researchのシニアリサーチアナリスト、アラ・バレンテ氏は、各州が個別に州法を制定する状態ではなく、連邦政府が全米で統一されたAI規制法を制定する方が企業にとっては望ましいと述べる。州単位のAI規制法が乱立した状態では、事業を展開する州ごとの規制に沿った対策が必要になり、規制の変更にも目を光らせなければならないためだ。
次回は、連邦政府が統一的なAI規制法を制定するのか、制定しない場合企業はどのような対策を取ればいいのかについて、専門家の意見を紹介する。
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