DEI施策に取り組んできた企業が相次いで施策を見直している。一方、多様性の推進を取りやめると、思わぬリスクも浮上する。調査レポートを基に、DEI施策を進めるメリットを4つ紹介する。
DEI(多様性、公平性、包摂性)を推進する動きに暗雲が垂れ込めている。DEI施策に取り組んできた大手スーパーマーケットチェーンWalmartをはじめ、GoogleやAmazon.comも施策を縮小すると報じられた。多様性を廃止すると、これまで得られたメリットを失い、リスクが浮上する可能性もある。調査会社McKinsey & Companyなどの調査レポートを基に、DEI施策のメリットを4つ紹介する。
ITコンサルティング企業TEKsystemsが2024年2月に公開したDEI施策に関する調査レポートによると、ITエンジニアの41%が、転職を検討している企業のDEI施策を「非常に重視する」と答えた。
多様性の重視が従業員の定着につながる可能性も、調査レポートは指摘する。回答者の77%は「多様性の促進は従業員と企業のつながりを強化する」と答えた。
DEI施策を優先することが事業の成果に寄与する可能性も明らかになった。調査レポートによると、回答者の78%が「多様性の促進は部門の成長につながる」、75%は「多様性に関する取り組みは部門の成果に肯定的な影響を与える」と答えた。調査は2023年11月、TEKsystemsと調査会社YouGovがIT部門や人事部門の従業員820人に対して、IT部門のDEI施策について聞いたものだ。
McKinsey & Companyが2023年11月に公開した調査レポートによると、取締役会出席者のジェンダーバランスが保たれている企業は、そうでない企業と比較して27%高い収益を上げる可能性がある。取締役会出席者のエスニックグループ(少数民族)の多様性を実現する企業も、そうでない企業と比較して13%高い収益を上げる可能性があるという。調査結果は、23カ国の企業1265社が公開する2022年9月~10月のデータを分析したものだ。
多様性に富んだ部門は、効果的な問題解決と意思決定ができ、最終的により良い成果を得られるという見方もある。TEKsystemsの調査レポートによると、IT従業員の42%は「DEI施策によって部門の業務生産性が向上した」と回答している。
採用候補者の幅を広げれば、高度なスキルを持つ人材を採用しやすくなる。テレワークをはじめとした柔軟な勤務形態を導入すれば、多様な人材との接点を持つことができる。
キャリアコンサルタント企業M Three Corporate Consulting(Mthreeの名称で事業展開)が公開した調査レポートによると、テレワークの選択肢を増やした企業の86%は、従業員の多様性を高めることができたと回答した。
多様な従業員を集めるため、求人票に記載する学歴要件を緩和する企業もある。調査レポートによると、学士号の取得を必須条件とするITエンジニアの求人を出す企業は2023年時点では72%だったが、2024年に54%まで減少した。調査は、米国、英国、カナダの21歳~25歳のITエンジニアと、中規模から大規模の企業におけるIT部門の管理職228人を対象に実施した。
従業員の多様性向上を目的として企業の70%が学士号の要件を撤廃したという報告もある。2023年11月、学生向けに教育関連の情報を提供するオンラインマガジン「Intelligent.com」が報告したものだ。調査はIntelligent.comの委託で調査会社Pollfishがオンラインで調査し、米国の800人が回答した。
多様性の向上が、企業の訴訟リスクを軽減する可能性もある。
米雇用機会均等委員会(EEOC:Equal Employment Opportunity Commission)が2024年9月に公開した調査レポートによると、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の従業員の間では、年齢差別が依然として問題となっている。従業員がEEOCに宛てた申し立てのうち19%以上は年齢差別に起因するものだった。一方、他の業界では、年齢差別に起因した申し立ては全体の14.8%だった。このことは、IT業界では年齢差別が法的問題に発展しやすいことを示唆するものだ。
IT業界では「年齢差別などを雇用主に訴えたところ報復を受けた」という従業員の申し立ても見られると、調査レポートは指摘する。「IT業界における差別は少なく報告されている可能性が高い」という。実際には報告件数よりも多くの差別があるが、従業員が報復を恐れて申し立てをしない可能性があるためだ。
こうした実態は、企業が気付かないうちに訴訟リスクを抱えている恐れがあることを示す。企業が多様性を重視すれば、年齢差別や報復の件数だけでなく、EEOCへの申し立てや訴訟リスクを軽減できる。
調査レポートは、2014年~2022年の米国における以下のデータを分析した。
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