多様性を推進してきたNPOが相次いで活動終了を発表した。多様性の尊重が社会的なテーマとなる中、なぜNPOは活動を終わらせているのか。DEIの現状を企業の動向や有識者の分析とともに紹介する。
多様性の推進はもう“不要”なのか。「DEI」(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)を推進してきたNPO(非営利団体)が次々と活動終了を発表した。有識者の意見を基に、DEIに関して何が起こっているのかを整理する。
人材企業Harnham Search and Selection傘下でデータ分析やAI(人工知能)分野の人材育成を実施するRockborneのCEO、ワシーム・アリ氏は、「DEIの分野には経済的、財政的、政治的な圧力がかかっている」と説明する。
アリ氏は「数年前までは、大部分の企業がDEIへの取り組みを声高に表明したり行動計画を公表したりしているように見えた」と話す。しかし「そうした企業の努力が危機にさらされている」という。同氏の周辺では、DEIを推進してきたNPOの活動が棚上げされたり、中止に追い込まれたりしているという。
この動きに呼応するように、2024年、IT分野における女性のキャリア支援や企業のDEIを推進する以下のNPOが活動終了を発表した。
DEIの推進に関するコンサルティングを手掛けるMildonの創業者でディレクターを務めるトビー・ミルドン氏も、DEIの取り組みは「減速しつつある」と指摘する。
ミルドン氏によると、一部の企業は、DEI案件を積極的に進めず、費用をかけていないという。「企業がコストの削減や売り上げの増加に集中しているとき、DEIの重要度は下がり、DEIの予算は削減される。DEIの成り行きは経済情勢や企業の予算に関係している可能性がある」(ミルドン氏)
企業向けにDEIのコンサルティングを実施するInclusioneeringの創業者兼CEOを務めるジョー・スタンスフィールド氏は、「DEIの現状は厳しい」と指摘する。一方、DEIに投資する企業は依然として存在すると明かす。
スタンスフィールド氏によると、一部の企業はDEIの抽象的な概念について語るのではなく、DEIの概念を具現化するための議論を進めるようになった。同氏は「企業内でDEIに対する解像度が高まり、DEIの推進を特定の部門が担うのではなく、企業全体の課題とみなし、DEIの推進を通じて成果を出そうと努力する企業が増加したのではないか」と推測する。
「DEIを推進したことで得られた功績は確実にある。しかしやるべきことはまだある」とスタンスフィールド氏は話す。英国コンピュータ協会(BCS)が2023年12月に公開した記事によると、IT業界おける女性従業員の割合は、2018年に16%だったが2021年に20%まで増加した。しかしこのペースでは、女性の割合が半分になるまであと283年かかる見通しだ。スタンスフィールド氏は「性別や少数民族については議論がなされてきた一方、性的少数者(LGBTQ+)や障害のある人にはそれほど焦点が当てられていない」とも指摘する。
では、企業がこれからもDEIの推進に取り組むためにはどうすればいいのか。DEIの推進を阻害する要因に「企業の管理職や経営層がDEIを推進する必要性を理解しきれていないこと」があるとミルドン氏は話す。
ミルドン氏によると、管理職や経営層は人事部長や現場の従業員ほどDEIの重要性を理解していない恐れがある。「管理職や経営層はDEIに関する調査レポートを読んでいるので、頭ではその重要性を理解している。しかし、なぜDEIを推進することが自社のビジネスにとって重要なのかを理解しきれているわけではない」
ミルドン氏によると、DEIに持続的に投資を続けるには「なぜ」を理解することが重要だ。スタンスフィールド氏も「DEIがビジネスにどう役立つかを理解する必要がある」と指摘する。「ビジネスの目標とDEIを関連付けることが大切だ。従業員の採用活動を見直そうとしている場合は、特定の目標を達成するのにDEIがどのように役立つかを考える必要がある」(スタンスフィールド氏)
スタンスフィールド氏は「DEIの推進は完全に終わったわけではなく、一時的に落ち込んでいるだけだ。経済が回復すれば、DEIを推進する組織や部門も復活し始める」と主張する。
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