英国市議会がOracleの「クラウドERP」導入でまさかの手作業発生 何が原因?クラウドERPを導入したのに“決算業務が遅延”の謎

SAPのERPからOracleのクラウドERPに移行した英国バーミンガム市議会が窮地に立たされている。市は決算業務に遅延が発生しただけではなく、財政破綻した。何が起こったのか。

2024年06月24日 08時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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 英国のバーミンガム市議会は、1999年から使用してきたSAPのERP(統合業務システム)をOracleのクラウドERPに移行することを決定。2018年に、ERPの移行作業を開始した。しかし移行は難航し、運用開始後も業務改善はおろか手作業による処理が発生しているという。何が起こっているのか。

なぜクラウドERPなのに手作業が発生した?

 2024年3月、バーミンガム市議会の財務計画責任者を務めるピーター・セバスチャン氏は同市議会に報告書を提出した。その中で、OracleのERPシステム運用で発生している以下の問題を指摘した。

  • OracleのERPシステムを導入して以来、正確な報告書を作成する能力に重大な問題が生じている。
  • OracleのERPシステムはトランザクションの内容を正確に転記しておらず、システムが処理したデータの正確性を担当者が確認するために、膨大な量の手作業が必要になっている。確認作業の所要期間は6カ月だ。
  • 膨大な確認作業によって、2023年の決算業務に遅延が発生した。経理チームの人員を遅延への対処に投入した結果、2022会計年度(2022年7月〜2023年6月)の経理業務にも支障を来している。
  • 予算の担当者が予算の収支を確認したり予測したりしやすくするための機能の実装が遅れており、この遅延による手作業も発生している。

 報告書からは、問題の解決にさらなる費用が必要であることが読み取れる。OracleのERPシステムのランニングコストに加え、計上済みの予算8600万ポンドと、2026年までに4500万ポンドの追加費用が必要になると書かれているのだ。

 バーミンガム市は2023年9月に財政破綻した。ITニュースサイト「The Register」は同市の財政破綻について、バーミンガム市議会議長を務めるジョン・コットン氏と、副議長を務めるシャロン・トンプソン氏に話を聞いた。両氏は「Oracleのシステム導入に伴うコストが財政破綻に拍車を掛けた」と説明したという。2024年2月には公共放送局BBC(英国放送協会)が、市民税を21%引き上げることを同市が認めたと報じた。同じタイミングで、議会の報告書からOracleのERPシステムを運用するための追加費用の存在が明らかになった。

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