離婚をはじめとした家事調停をオンラインで完結させるサービスを、英国の慈善団体が提供開始した。サービスの構築にはあるITベンダーの支援が不可欠だった。解決した課題とサービスの詳細は。
英国には、離婚調停をはじめとした家事調停において、第三者機関が当事者間の合意形成を支援する仕組みがある。1982年設立の慈善団体National Family Mediation(NFM)は、離婚に関する合意形成が困難な当事者に対し、調停人の紹介や情報の提供をすることによって、調停を通じた合意形成の実現、裁判への移行や紛争の予防を担ってきた。
2023年、NMFのCEOに就任したサラ・ホーキンス氏は、NMFの従業員、調停人、利用者の利便性を向上させるため、調停人や組織の紹介プロセスのデジタル化に取り組んだ。どのような変化があったのか。
ホーキンス氏によると、NMFの職員は従来、Webサイトに届く問い合わせを手作業で処理していた。Webサイトからの問い合わせ、返信までに1時間以上かかることもあった。週末に届いた問い合わせの返信が、翌週に持ち越されることもあった。
「心理的に不安定な利用者が助けを求めているのに、すぐに反応できない状況だった」。ホーキンス氏はこう述べる。CEOに就任した同氏は、この状況を一刻も早く変える必要があると判断した。
顧客管理システム「Salesforce」を10年以上利用してきたNMFのCEOとして、ホーキンス氏は同サービスを使った紹介プロセスの自動化に取り組む意向をSalesforce社に相談した。しかし、それは実現不可能だと繰り返し言われていたという。
NMFは予算が限られた慈善団体として、予算の範囲内で最大限技術を活用しようとしてきた。「その中で、NMFのメインデータベースであるSalesforceの機能を最大限に活用する必要があった」とホーキンス氏は説明する。
解決策を探していたホーキンス氏は、Salesforce社のコンサルティングパートナーであるBrysaを見つけた。協議の結果、NMFが求める機能は実現可能であることが判明した。プロジェクト開始から8週間後、NMFは自動化を実現し、Webサイトの利用者に対する情報提供の自動送信と応答時間の改善を実現した。
NMFは500拠点でサービスを提供し、さまざまな場所にある13社のパートナー企業と協力している。従来、NMFの利用希望者から問い合わせを受けた場合、NMFは利用者の郵便番号に基づいて最寄りの企業や調停人と照合する必要があった。
自動化に当たっては、Salesforce社のノーコードツール「Flow Builder」とGoogleの地図機能配信サービス「Google Maps Platform」のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使って、利用者の情報を照会できるようにした。この結果、利用者を調停人やパートナー企業に自動で振り分けられるようになった。
この結果、それまで利用者を手作業で振り分けていた従業員は、本来の業務に専念できるようになった。「自動化のおかげで、より多くの電話対応やメール返信、利用者のシステム登録が可能になった」とホーキンス氏は語る。
紹介の重複を減らすこともできた。Brysaは、メールの自動送信の設定や案件更新をトリガーとしたWebサイトの更新、調停人へのアラート送信などにおいてもNFMを支援した。
紹介プロセスの自動化に加え、メール配信に関する改善やストレージの最適化、業務の割り当て、案件終了時のコミュニケーションの自動化も実現した。
NMFは、「NFM LegalEyes」というサービスも提供している。都度払いで仲介者の調停サービスを利用するのではなく、固定価格で調停から離婚手続きまで完結できるのが特徴だ。仲介者の業務管理や利用者の調停プロセス管理ツール「MOMO」(Management of Mediation Online)も構築した。
ホーキンス氏によると、調停の案件管理アプリケーションは複数存在する。しかしそうしたアプリケーションの中には、NFMのような信頼できる組織が運営に関わっていないものがあり、機密データの管理に課題があるという。
MOMOを利用することで、利用者は調停プロセスをオンラインで完結させることができ、財務情報をはじめとした機密情報の管理にも役立つとホーキンス氏は説明する。弁護士を自分で探す必要もないため、調停に関する時間と費用を節約可能だ。
「MOMOを使えば、弁護士に提供するための情報をデジタル化できる。利用者は安全に書類をアップロードしたり情報を入力したりでき、調停人はそれらを一目で確認できる」(ホーキンス氏)
ホーキンス氏は、パートナー企業や調停人がMOMOのライセンスを購入して使用する将来像を描く。具体的には、MOMOを社外利用するための安全性と機能性をテストした後、ライセンス供与したい考えだ。
利用者の予約が直接調停人に届くようにする展望もある。「全ての手続きがWebサイトで完結し、Salesforceに連携させることが理想だ。Webサイトでの人工知能(AI)技術の活用も検討している。最新技術に追従したいが、慈善団体という性質上、予算の制約があるのも事実だ」(ホーキンス氏)
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