オークランド戦争記念博物館が進めるAI技術の活用には、シャドーITなどの課題がある。そうした課題にどのような姿勢を示し、AI技術を活用した業務支援や来館者の体験向上の取り組みを進めているのか。
ニュージーランドのオークランド戦争記念博物館(Auckland War Memorial Museum)は、ストレージの刷新によるデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現した。同博物館はITを組織変革プロジェクト「Path to 2029」の推進役として位置付けており、収蔵品の検索性を高めるデジタル資産管理(DAM)システムの導入、データ分析の強化、人工知能(AI)技術の導入などを進めている。ただしその中では、職員による「シャドーIT」(組織の正式な承認なしにエンドユーザーが使用するAIサービス)の使用など、同博物館が直面している課題を乗り越えなければならない。IT部門のリーダーが語る課題と、博物館ならではの取り組みを紹介する。
オークランド戦争記念博物館はデータとAI技術の活用を支援するために、データ文化の定着を目指している。具体的にはデータガバナンスの強化、文化資産データの適切な取り扱い、館内外での組織間コラボレーションといった取り組みの推進だ。「データ文化を根付かせる最初のステップとして、適切な指針や体制、実践法を整備している最中だ」と、同博物館のテクノロジーおよびデジタル部門長であるデービッド・マクリントック氏は述べる。
データ分析とAI技術が活躍する領域は多岐にわたる。施設サービスチームは、100年に近い歴史を持つ建物の維持費を削減する方法を模索しており、気象データと観光関連データを組み合わせることで、空調を効率的に運用しようとしている。収蔵品チームは、AI技術を使って収蔵品から人が気付きにくい洞察を得ることに関心を示す。
マクリントック氏は、管理部門でのシャドーAIを確認済みだ。一方で「AIサービスの料金やリスクを考慮して慎重なポリシーを設けているが、活用を阻害したいわけではない」とも述べる。IT部門は今後、AIサービスの活用例の考案や費用対効果の分析など支援する計画だ。
現在のところ、オークランド戦争記念博物館は人が介在する用途でのみAI技術を使用している。マクリントック氏は、将来的に一部の領域においてこの制限を緩和する可能性について言及する。特に、AIモデルの出力をそのまま反映するのではなく参考情報として扱う領域での応用を見込んでいるという。
データとAI技術を活用して、来館者の体験を向上させる計画も進めている。例えば子どもが訪問前に自分のアバターを作成し、館内でそのアバターが話しかける仕組みの導入を検討中だ。博物館を訪れた子どもがデジタル作品を保存して、数十年後に家族に見せられるようにする案もある。
マクリントック氏は、顧客関係管理(CRM)システムと連携させたパーソナライゼーションの活用法を考案している。来館者が最近オンラインで検索した収蔵品に関する展示品を紹介したり、前回の訪問以降に展示された関連アイテムを通知したり、関心のある展示物へスムーズに案内するナビゲーション機能を提供したりすることなどが挙げられる。
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