ネットワーク監視に欠かせない「SNMP」と「Telemetry」の仕組みとはSNMPとTelemetryの特徴【前編】

ネットワーク管理者はネットワークのパフォーマンスや障害の予兆などを監視しなければならない。監視のための仕組みは「SNMP」と「Telemetry」がある。両者の特徴とは。

2025年03月28日 05時00分 公開
[Terry SlatteryTechTarget]

 ネットワーク監視の仕組みには、「SNMP(Simple Network Management Protocol:簡易ネットワーク管理プロトコル)と「Telemetry」(以下、テレメトリー)がある。ネットワーク管理者はSNMPとTelemetryをどのように使い分ければいいのか。それぞれの特徴とは。

SNMPの仕組みとは

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 SNMPはインターネット技術の仕様を記した文書である「RFC」(Request for Comments)の「RFC 1098」として策定された。それ以来、さまざまな組織がネットワークの監視にSNMPを利用している。

 SNMPはポーリング(一定の間隔で対象を定期的にチェックする手法)方式で、ネットワーク内のデバイスが送受信するデータ量や稼働状況などのパフォーマンスに関するデータを収集して、管理者に返す。

 SNMPに準拠しているネットワーク機器はMIB(管理情報ベース)と呼ばれるデータベースを保持している。MIBには管理対象となるネットワーク機器の情報が記述されており、各機器をOID(オブジェクトID)で識別する。ネットワーク管理者はSNMPを利用時に、主に次の3つのリクエストによって、定期的あるいは必要に応じてネットワーク機器を監視する。

  • GetRequest
    • MIB内の特定のOIDの値を要求する。
  • GetNextRequest
    • MIB内の特定のOIDの次の値を要求する。
  • GetBulkRequest
    • 複数のOIDの値をまとめて要求する。

 「RFC 1213」ではMIBの新たなバージョンとして「MIB-II」が定義された。MIB-IIではさまざまな仕様の標準化が進み、管理者はベンダーに依存せずにSNMPを利用しやすくなった。

 SNMPの特徴としては、シンプルな通信プロトコル「UDP」(User Datagram Protocol)を利用するため、ネットワーク監視に必要な処理の負荷を比較的抑えることができる点が挙げられる。

 だが、SNMPではポーリングのたびに、管理サーバ側からネットワーク内の各機器に情報を要求する。そのため、ポーリングの頻度次第でネットワーク内の各機器への負荷が増す。

テレメトリーの仕組み

 テレメトリーによるネットワーク監視の仕様は「RFC 9232」で「Network Telemetry Framework」で策定されている。ポーリング方式のSNMPと比較して、テレメトリーではネットワーク機器から継続的にデータを送信する。そのため、SNMPに比べてネットワークの情報をリアルタイムに把握しやすくなる。

 ただし、常にリアルタイムの情報を取得すると管理サーバ側が処理するデータ量が膨大になってしまう。そのため、ネットワーク管理者は、ネットワークにおける特定の項目のしきい値を超えた場合など、あらかじめ設定したイベントをトリガーとして、テレメトリーで監視を開始できる。特定のエラーの発生をトリガーとすることも可能だ。イベントを起点とした情報の収集はSNMPも可能だが、テレメトリーの方がよりリアルタイムかつ信頼性の高いネットワーク監視情報を手に入れることができる。

 テレメトリーで主に利用されるデータ形式は以下の通り。

  • XML(Extensible Markup Language)
  • JSON(JavaScript Object Notation)
  • Protocol Buffers

 テレメトリーで主に利用される通信プロトコルは以下の通り。

  • TCP(Transmission Control Protocol)
  • UDP(User Datagram Protocol)
  • gRPC(Google Remote Procedure Calls)
  • gNMI(gRPC Network Management Interface)

 テレメトリーを利用するとデータが膨大になる恐れがある。ネットワーク管理者は、ネットワーク管理システムの処理能力を圧迫しないよう、各種データをストリーミングするための間隔やイベントトリガーを決定しなければならない。


 次回はSNMPとテレメトリーを比較する。

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