Nutanixが主催したイベントにはVMware製品からの移行を検討する顧客が多数参加した。それだけNutanixへの関心が高まっている。Nutanixはどのような移行ニーズを取り込もうとしているのか。
仮想化ベンダーVMwareの競合であるNutanixが2025年2月に英国で開催したイベント「NUTANIX .NEXT On Tour London」にはさまざまな参加者が集まった。参加者の大半はNutanix製品の既存顧客ではなく、新規顧客候補だった。
仮想化ベンダーVMwareが半導体ベンダーBroadcomに買収されたことに対する懸念から、顧客は代替製品を探しており、このイベントにもそのような人が参加していた。こうした状況において、NutanixはVMware製品ユーザーのどのようなニーズを取り込もうとしているのか。
半導体ベンダーBroadcomは2023年にVMwareの買収を完了した。BroadcomはVMware製品の永久ライセンスを廃止してサブスクリプションライセンスに移行した他、ソフトウェアバンドルも変更した。
VMware製品はBroadcomによって、4種類のサブスクリプションプランと追加サービスに集約された。Broadcomのこれらの戦略の結果、一部の顧客にとってVMware製品のコストはこれまでより高くなった。
「複数のVMware製品を連携させ、1つのスタックとして導入できるようにすることで、データセンター全体を仮想化して1つのプラットフォームを構築できるようにした」とBroadcomのCEOであるホック・タン氏は述べている。
長年にわたり、さまざまな企業がデータセンターのサーバ仮想化にVMware製品を利用してきた。これらの組織ではITインフラにVMware製品が深く浸透している。それを別の製品に置き換えるには高いコストがかかり、リスクが伴うと考えられている。Broadcomの戦略は、顧客がVMwareのプライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)をベースとするプライベートクラウドでアプリケーションを実行することを目指している。
Nutanixは仮想化基盤市場におけるVMwareのライバルだ。NutanixのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品「Nutanix Cloud Platform」はオンプレミスインフラとクラウドサービスのハイブリッド環境で運用できる。
Nutanix Cloud Platformはアプリケーションの実行環境としてコンテナを作成して管理できる。アプリケーションによってはコンテナ化の方がサーバ仮想化よりも少ない処理能力で効率的に実行できるため、特にクラウドネイティブなITインフラを目指す企業にとっては魅力的だ。だが、現実的にはかなりの数の組織が、当面はVMware製品によって主要なIT資産を維持していくだろう。
Nutanixは、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」を使用したコンテナ化を、複数のパブリッククラウドでアプリケーションを実行できるようにする方法として位置付けている。
Nutanixは調査会社Vanson Bourneに委託して、2024年秋に世界各国のITおよびDevOps/プラットフォームエンジニアリング部門の意思決定者1500名を対象にクラウドサービスの採用状況を調査した。その結果、回答者の約90%が一部のアプリケーションをコンテナ化して利用していた。
BroadcomがVMwareに加えた変更によって、VCFを購入したくない一部のユーザーにコスト増が発生することになり、Nutanixはこれを仮想サーバから同社の製品群への移行を促す好機と捉えている。こうした顧客は、最初は一部の領域だけをVMwareから移行するだろうが、Nutanixはこうした顧客企業に、いずれは同社のハイパーバイザー「Nutanix AHV」などの製品に全面的に移行することを促している。
Nutanixは、VMware顧客の状況を長期的な計画として考えている。企業が利用しているVMware製品のライセンス契約の期限終了が迫り、Broadcomが実施した変更を踏まえて代替ハイパーバイザーへの移行を検討しようと考えたときに初めて、商機が訪れる。
「脱VMwareを決めた組織でも、どこへ、どのように移すかを考えるにはしばらく時間がかかる。移行戦略の計画はそれからだ」とブリンデッド氏は語る。同氏によると、移行計画は通常、数年掛かりのプロジェクトになる。
次回はNutanixを採用した事例について紹介する。
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