「Wireshark」と「tcpdump」の違いは? どう使い分ける?パケットキャプチャー入門【後編】

パケットキャプチャーツールとして、GUIのある「Wireshark」とCLIで利用する「tcpdump」がある。両者はどのように使い分けるのが効果的なのか。

2025年03月26日 07時30分 公開
[Damon GarnTechTarget]

 「Wireshark」と「tcpdump」はどちらもパケットキャプチャーツールだ。両者には重複する機能があるが、幾つか異なる特徴もある。ネットワーク管理者は状況に応じて使い分けるべきだ。どのような場合にWiresharkが適しているのか。

tcpdumpよりもWiresharkを使うべき時は?

Wireshark

 Wiresharkのユースケース(想定される使用例)は次の通り。

  • トラフィック(ネットワークを流れるデータ)の識別
    • 管理者は、トラフィックを識別する必要がある場合、Wiresharkを使用するのがいいだろう。Wiresharkは送信元と宛先のアドレスを表示するため、トラフィックが発生する場所やセグメント上のシステムを簡単に確認できる。
  • パフォーマンス管理
    • Wiresharkは、ネットワーク管理者がパフォーマンス管理を最適化するのに役立つ。例えば、ネットワーク管理者が、特定のセグメントでネットワークのパフォーマンスが低下しているというヘルプデスクからのメッセージを大量に受け取った場合、WiresharkをインストールしたノートPCをそのセグメントに接続してトラフィックを収集できる。
    • 例えばレプリケーション(複製)作業などによってファイル転送のジョブが大量に発生して、ネットワークの帯域を逼迫(ひっぱく)しているなど、遅延を発生させている原因を特定するのに役立つ。
  • フィルタリング
    • Wiresharkの「Statistics」(統計)メニューには複数のパフォーマンス分析機能が含まれている。
    • ネットワーク管理者は「IO Graphs」(I/Oグラフ)を表示したり、「Protocol Hierarchy」ビューを使用してネットワーク上で見つかった各プロトコルの割合を確認したりできる。

tcpdump

 tcpdumpのユースケースは次の通り。

  • GUIがないシステム
    • コマンドラインインターフェース(CLI)で動作するため、GUIのないシステムでも利用できる。
  • 迅速なキャプチャー
    • ネットワーク管理者は、最初のキャプチャーにtcpdumpを使用することがある。
    • tcpdumpは比較的リソース消費量が少なく、短時間でのキャプチャーに適しているからだ。
  • 自動化
    • コマンドラインツールであるため、スクリプトに組み込んだり、他のツールと連携させて自動化したりするのに適している。

Wiresharkとtcpdumpの統合

 Wiresharkとtcpdumpはよく似たタスクを実行するが、ネットワーク管理者は1つの種類のパケットキャプチャーツールに限定する必要はない。両方に精通し、いつどちらを使用するのかを知っておくべきだ。

 例えば、ネットワーク管理者は、tcpdumpを使用してキャプチャー結果をファイルに書き込み、それらをWiresharkで開いてフィルタリングできる。ネットワーク管理者はGUIのないLinuxのサーバでtcpdumpを使用してパケットをキャプチャーし、その結果をOSの「macOS」「Windows」などを搭載した端末のWiresharkで分析することがある。

まとめ

 ネットワーク管理者は、パケットキャプチャーツールをセキュリティ対策用のツールとして考える傾向にある。しかし実際は、ネットワークチームがトラブルシューティングを行ったりホストを特定したり、ネットワークパフォーマンスの問題を調査したりするのにも役立つ。

 Wiresharkはシンプルで複数のOSに導入可能で、高度なフィルタリング機能を備えている。一方tcpdumpは、軽量でスクリプトを作成しやすい。管理者は、各ツールをいつ、どのように使用するかを知ることで、より良い結果を得ることができる。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品レビュー 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

会社のWi-Fiあるある問題、「なんとなく」を卒業しWi-Fiを快適・安全にするには

企業のWi-Fiにおいて、適切な環境設定がされていなかったり、トラブル対応が属人化していたりと管理体制が不十分なケースは多い。Wi-Fiの設定が安全性にどう影響するのだろうか。“Wi-Fiあるある”として6つのケースを紹介する。

技術文書・技術解説 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社

プライベートサブネット内リソースを生成AIサービスと連携させる方法

クラウドベースのAIエージェント開発において、プライベート空間内のリソースとAIサービスとの連携方法が分からないという声がしばしば聞かれる。この疑問に応えるべく、両者のAPI連携の方法を、ステップバイステップで解説する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

エンジニアが学ぶべき「ネットワークの基礎」はこれだ

ネットワークはあらゆるITシステムの基盤であり、IT担当者は専門分野を問わず、ネットワークの基本的な知識を習得する必要がある。IT担当者が学ぶべきネットワークの基礎知識と、基礎を学べる認定資格とは。

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画(2025年02-03月ネットワークセキュリティ特集)

「SD-WAN選び」で失敗しない 押さえておくべきポイント5選

SD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)を導入する際はどのような観点で製品を選べばいいのか。メリットやデメリットなど押さえておくべき5つのポイントを紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア広告企画(2025年02-03月ネットワークセキュリティ特集)

ADCの役割に変化 新たな役割や機能をおさらい

ロードバランサーから進化した「ADC」(アプリケーションデリバリーコントローラー)は、負荷分散にとどまらない、さまざまな機能を追加し続けている。充実するADCの機能をおさらいしよう。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...