クラウドストライクが年次レポート「2025年版グローバル脅威レポート」を公表。生成AIを悪用したソーシャルエンジニアリングの増加や中国系攻撃者の活動活発化、ビッシングの急増などの状況が明らかになった。
CrowdStrikeの日本法人クラウドストライクは2025年3月28日、年次レポート「2025年版グローバル脅威レポート」を公開した。同レポートは2025年2月27日に米国で発表された「2025 Global Threat Report」の日本語版。今回のレポートでは「中国によるサイバー攻撃が激化」「生成AIを悪用したソーシャルエンジニアリング攻撃」「国家による脆弱(ぜいじゃく)性の調査と悪用」「マルウェアを使用しないアイデンティティーベースの攻撃が急増」といった点が報告されている。
レポートを説明した同社の鵜沢裕一氏(ファルコン コンプリート マネージャー)は、CrowdStrikeは13年以上に渡ってこの分析を続けているとした上で、「絶えず進化する脅威の状況についての重要な情報を提供するために、本レポートを作成している」と語った。現在の脅威状況の悪化傾向については、「過去12カ月において脅威アクターたちは防御側の対応策を回避するための手段を考案し、攻撃手法を進化させてきている」と指摘する。
サイバー攻撃を実行する脅威アクターは、諜報活動等他国に対して優位を得るための活動を担う「国家支援型攻撃グループ」、主に経済/金銭的利益を目的とする「サイバー犯罪者」、政治的な主義主張などに基づいて行動する「ハクティビスト」の3種に分類されている。
CrowdStrikeは「攻撃者の動機を知り、目的や手段を把握することで効果的に防御する」ことを目指し、実際に観測される攻撃手法やマルウェアなどのソフトウェアだけにとらわれず、実際に攻撃を実行している「人間」に焦点を当てた分析をすることで知られている。その同社が、独立した攻撃グループとして認識し、動向を追跡している攻撃グループは計257件に達し、2024年中に26件が増加したという。ほぼ2週間に1件のグループが新たに出現している計算だ。
国家支援型攻撃の後ろ盾となる国家も増加し、2024年にはエジプトとカザフスタンをベースとする脅威アクターの出現が確認されたという。鵜沢氏は「国家は情報収集と妨害活動におけるサイバー攻撃の費用対効果の高さを認知しており、しばしば特定が難しい攻撃手法を採ることができるため、世界中で脅威アクターの数が増加していることを確認している」とした。特に中国政府の支援を受けているとみられる攻撃グループの活動が活発化しており(図)、レポートで「中国のサイバースパイ攻撃の数が150%増、メディア、金融サービス、製造業に対する攻撃は200〜300%増加している」と報告されている。
鵜沢氏は中国の国家支援型攻撃の技術的な進化についても指摘し、次のように警告した。「従来は目的の情報を盗み出すことに主眼を置いており、被害者側にばれることについては気にしていなかったが、近年は攻撃を隠匿化するための高度な手法を使うようになってきており、長期間に渡って潜伏するための投資をしている。この変化により、中国の脅威アクターの追跡と対策はさらに困難になってきている」
2024年のトピックとしては、生成AIの急速な進化が挙げられる。サイバー攻撃者による生成AIの悪用も進んでおり、技術力の低い攻撃者でも効果的なサイバー攻撃が実施できるようになってきたという。例えば、企業のエグゼクティブのスピーチがインターネットで公開されていたりするため、これを素材として学習させることで本人の声を偽装し、不正な資金振込を指示する音声を偽装して電話を使って担当者をだます、「ビッシング」(Voice Phishing)と呼ばれる手法が急増していることもその一例だ。
この他、イランの政府支援型攻撃グループが生成AIを悪用して「脆弱性調査、攻撃用コードの開発、イラン国内のネットワークへのパッチ適用」に活用したという事例も紹介されている。
こうした動向を踏まえて鵜沢氏は、
という5つの手順で対策に取り組むことを推奨した。
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