ランサムウェア攻撃の“収益”が30%減 稼げなくなった犯罪者の誤算犯罪ビジネスはもう限界?

これまで猛威を振るってきたランサムウェア攻撃だが、2024年になって攻撃者の収益が減少した。この不況は一時的なものではなく、構造的な問題に起因する。何が「犯罪のビジネスモデル」を崩壊させつつあるのか。

2025年04月15日 05時00分 公開
[Alex ScroxtonTechTarget]

 ブロックチェーン分析企業Chainalysisによると、2024年、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃集団は身代金の支払いによって合計8億1355万ドルを「収入」として得た。2023年の12億5000万ドルから約3割減少したことになる。なぜなのか。

ランサムウェア攻撃による収入が減った理由はこれだ

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 Chainalysisは減少の主な原因として、さまざまな国や地域の警察が国境を越えて協力し、ランサムウェア攻撃集団の取り締まりを強化したことの成功を挙げる。

 もう一つの原因は、身代金要求額が少なくなったことだ。セキュリティベンダーCovewareインシデント対処シニアディレクターのリジー・クックソン氏は、「現在のランサムウェア攻撃者には、中小企業を狙う新規参入者が多数存在する。これに伴って、身代金要求額も比較的低額になっている」と語る。

 身代金の支払いを拒否する被害組織も広がっているとChainalysisは説明する。その背景には、組織がデータのバックアップといったランサムウェア攻撃に備えた対策を講じて回復力を得たことで、攻撃者に対する立場が強くなったことがあるという。

 セキュリティベンダーActive Forensics(Actforeの名称で事業展開)創設者兼CEOのクリスチャン・ガイヤー氏は、「システムとデータを一元的に保護するバックアップツールを導入する組織が増えている」と述べる。データのバックアップを実施していれば、システムが暗号化されても迅速な復旧を図ることが可能だ。「インシデント対処ツールの導入も広がっており、これを使うことでどのデータが侵害されたのかを迅速に特定できるようになる」とガイヤー氏は言う。

 ガイヤー氏によると、ランサムウェア攻撃の被害組織は身代金の支払いを巡る法的影響を懸念して支払いを拒否する場合がある。特に攻撃者が、被害組織と敵対する国家政府の支援を受けている場合、倫理的な視点から支払いを拒否するケースもあるという。

取り締まり強化による攻撃者の変化

 ランサムウェア攻撃において暗号資産(仮想通貨)がどのように利用されているかに関してもChainalysisは見解を公開している。それによると、2024年はミキサー(複数の暗号資産取引を混ぜ合わせ、履歴を追跡しにくくするサービス)の使用が減少した。ミキサーを巡る警察の取り締まりの強化が影響しているとみられる。

 ミキサーの代わりに台頭しているのが「クロスチェーンブリッジ」だ。クロスチェーンブリッジは異なるブロックチェーン間でデータを共有するための仕組みを指す。攻撃者は警察の動きを懸念し、暗号資産の現金化を控えているとChainalysisは説明する。

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