ITインフラ刷新に当たって「HPE GreenLake」を採用した米国の教育機関。クラウドサービスではなく、なぜ“オンプレミスインフラのマネージドサービス化”を選んだのか。その理由と、導入後に得られたメリットとは。
米カリフォルニア州のグロスモントユニオンハイスクール公立学区(GUHSD:Grossmont Union High School District)は、州内の学区で最も優れたIT部門を目指してITインフラを刷新し、Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE GreenLake」を導入した。HPE GreenLakeはオンプレミスのインフラを従量課金型で提供するサービス群だ。
GUHSDの13カ所の校舎には、約1万7000人の生徒が通う。同学区の教育テクノロジーサービス担当エグゼクティブディレクターを務めるリック・ロバーツ氏によると、GUHSDはHPEのブレードサーバ「HPE BladeSystem」の「c7000」シリーズや、ストレージ「HPE 3PAR StoreServ」を利用していた。ロバーツ氏は「従来のインフラは組織のニーズを十分満たせるものだったが、変化が必要だった」と話す。
ロバーツ氏によると、必要なデータ容量を予測し、3年ごとにストレージを追加購入することがGUHSDの慣習となっていた。必要なデータ容量を予測したり、大規模なIT予算の承認を得たりする作業がIT部門の負担になっていたという。
ITインフラを刷新することで、ストレージとサーバの管理からIT部門を解放するという目標もあったとロバーツ氏は説明する。日常の業務アプリケーションの運用業務やサイバーセキュリティ対策に注力するための時間を確保したいと考えていた。
GUHSDの刷新後のITインフラは、以下の製品やサービスで構成されている。
HPE Greenlakeを導入したことで、GUHSDのIT部門はサーバにパッチ(更新プログラム)を適用するといった作業をする必要がなくなり、サーバやストレージの管理に割く時間を減らせるようになった。
ただしIT部門の従業員は、この変更を必ずしも前向きには受け止めなかった。従業員はねじを回すような単調な業務が減り、新しい業務や高度な業務が増えることへの拒否反応を示したのだった。
HPEはGreenlakeを通じてさまざまなサポートをGUHSDに提供する。しかし同社とGUHSDの拠点の間には距離があり、GUHSDの従業員による素早い対処が必要な問題が発生する場合がある。自然災害が発生した場合がその一例だ。だからこそ、問題発生時の初動対応をIT部門が担当するようにすることで、従業員に強い責任感が育まれることをロバーツ氏は期待しているという。
HPE Greenlakeを使うことで、老朽化したスイッチの交換やサイバーセキュリティの強化などの管理作業を素早く進められるようになった。その結果、従業員の時間の使い方に変化が起きた。学区で発生した問題に迅速に対処したり、重要な課題に注力したりすることが可能になったという。
ロバーツ氏は次のように話す。「HPE Greenlakeを導入する以前からHPEとは協力関係にあったため、HPE以外のベンダーを選ぶ選択肢は考えていなかった」。インフラの管理をマネージドサービスに切り替えるのであれば、GUHSDの従来の取り組みを知るベンダーに頼りたいと同氏は考えた。
HPE GreenLakeへの切り替えは、コスト削減よりもコスト予測に重きを置いた計画だったという。HPE GreenLakeへの移行前よりも、移行後の方がコストは高額になった。しかしマネージドサービスを使えるようになったり、将来的にITインフラを拡張することになった場合にリソースを容易に確保できるようになったりするといったメリットが得られた。クラウドサービスで享受できるようなこうしたメリットを、オンプレミスインフラで得られるようになった。
IT予算を確保する方法にも変化があったという。「新たにサーバやストレージが必要になったときに数百万ドル規模の予算を要求するよりも、月額利用料と使用したサービスに対する料金で予算を確保する方が予算を組みやすい」(ロバーツ氏)
HPE Greenlakeの導入を経て、GUHSDはプライマリーサイト(メインデータセンター)とDR(災害復旧)サイトを構築した。ネットワーク管理とDRはGUHSDのIT部門が担う仕事として残っているが、「マネージドサービスの利用を他の業務にも広げる可能性はあるので、混乱を招かないように一歩ずつ進める」とロバーツ氏は語る。
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