BroadcomによるVMware買収に伴い、教育機関がVMware製品の実質的な値上げに直面している。VMware製品の代替製品を検討する余裕がない非営利団体の事例を紹介する。
半導体ベンダーBroadcomが仮想化技術ベンダーVMwareを買収し、教育機関や慈善団体は割引プログラムの廃止を受けてVMware製品の実質的な値上げに直面している。一部の教育機関のITインフラはVMware製品に依存しており、代替製品に移行する時間を十分に確保できていない。他ベンダーへの切り替えが困難になる「ベンダーロックイン」に陥った英国の非営利団体の事例を紹介しよう。
London Grid for Learning(LGfL)は、約3000件の教育機関にITサービスを提供する英国の非営利団体だ。毎日およそ200万人の教職員や学習者、公共部門の職員がLGfLのネットワークに接続しており、その要であるデータセンターのシステムではVMware製品が稼働している。
2024年4月に、LGfLはVMware製品のライセンスの更新を計画していた。LGfLのセキュリティ関連の業務を担当しているマイケル・エバ氏(プログラムマネジャー)によると、VMwareが新しい料金体系を提示したのは、その更新日の数週間前だった。
LGfLが利用していたのは、VMware製品の永久ライセンスだ。ところがBroadcomが永久ライセンスの新規購入を終了するとともに、保守と更新を打ち切ると発表したため、LGfLは新しいサブスクリプションのライセンスへの移行を検討する必要に迫られた。
BroadcomがLGfLに提示した新しい料金は、以前と比べると格段に増加する見込みだ。LGfLが代替製品を検討し、年間保守契約のみを締結する場合でも、1年間の更新料金は、以前のライセンスと保守費用と比べて増えることになる。
エバ氏は、今回の値上げを「VMwareの市場における地位を悪用したものだ」と評する。「LGfLが契約を更新しないと決めた場合、同団体のアプリケーションは機能しなくなる。それによって、イングランドの教育機関全体が混乱することになる」と同氏は言う。
ベンダーが大幅な値上げを実施し、契約更新日の数週間前まで価格を提示しない状態を、エバ氏は「憂慮すべき事態」だと表現する。「教育に支障を来したり、セキュリティリスクにさらされたりすることなく、代替製品を検討し、導入するための適切な時間がない。これは倫理的ではないと感じる」(同氏)
LGfLが保守契約を更新しない場合、VMware製品にはパッチ(修正プログラム)を適用できなくなり、セキュリティリスクにさらされることになる。LGfLはVMware製品を用いて、学習者が教育機関や家庭からインターネットに接続する際のWebフィルタリング機能を管理している。LGfLのサービスがなければ、学習者はWebフィルタリングが適用されていない状態でインターネットに接続することになり、安全対策上の懸念が生じかねない。
非営利団体であるLGfLがライセンス料金の増大コストを回収する方法は、増大した分のコストを教育機関への請求額でまかなうことだ。しかし、そうした教育機関は資金繰りに苦しんでおり、エバ氏は「そのような選択肢は取るべきではない」と述べる。
後編は、VMware製品の値上げに直面している別の教育機関の事例を紹介する。
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