BroadcomによるVMwareの買収がついに完了した。今後Broadcomはどのような戦略を取るのか。VMware買収により何が始まるのか。
半導体ベンダーBroadcomによるVMware買収が2023年11月22日(現地時間)、ようやく完了した。2022年5月に買収を発表して以来、政府による調査をはじめとして、1年以上も不確実な状況が続いていたこの買収の完了の知らせに、さまざまな人が安堵(あんど)したことだろう。
Broadcomの最高経営責任者(CEO)を務めるホック・タン氏は、買収完了を発表したBroadcom公式ブログで、今後の戦略を「apps anywhere」と表現した。どのような戦略なのか。
apps anywhere戦略はユーザーが、物理および仮想化環境、クラウドサービスといった基盤を問わずにどこでもアプリケーションやサービスを実行できるようにするというものだ。その中核となるのは、仮想化によってコンピューティング、ストレージ、ネットワークのリソースを抽象化するSDDC(Software-Defined Data Center:ソフトウェア定義データセンター)の「VMware Cloud Foundation」(VCF)だ。
タン氏はKubernetes関連製品群「VMware Tanzu」についても言及した。VMware Tanzuは同氏によれば、特にエンタープライズ(主に大企業を指す)のアプリケーション開発者向けの製品群で、VCFと組み合わせることであらゆるインフラ上でアプリケーションの開発、配信、管理を支援できるという。
VMwareの幹部はしばしば、ユーザーがあらゆるクラウドサービスから最適な場所でアプリケーションを実行できるようにするというビジョンを語る。このクラウドサービスには、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」と、オンプレミスシステムとクラウドサービスを併用する「ハイブリッドクラウド」も含まれている。
タン氏は、次のように強調する。「私たちの目標は、ユーザーのプライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを最適化し、どこでもアプリケーションやサービスを実行できるようにすることだ」。もちろん、「あらゆるクラウド」とは実のところ「VMwareを実行しているあらゆるクラウド」を指すという前提を受け入れるとしたらだ。
VMwareを批判するつもりはない。VMwareには強力で成熟したエコシステムがあり、近年はアプリケーション開発者向け製品群を提供するPivotal(現Tanzu)や、セキュリティベンダーCarbon Blackを買収するという賢明な判断で一層強化されている。そのため、SDDCの構築と運用を1社で十分にサポートできる。そうした巨大な組織であるBroadcomおよびVMwareの主張の一部に、暗黙の前提があることを指摘するのは理にかなっているだろうか。
実際のところ、こうした指摘は的外れだ。BroadcomはクライアントOS「Windows」やオフィススイート「Microsoft Office」に代わるものは持っていない。しかし、エンタープライズ向けデータセンターと複合ITインフラに関しては、同社のソフトウェアポートフォリオは充実している。
Broadcomの製品ポートフォリオには、CA Technologiesの買収で以下も加わった。
ついにはメインフレームでもVMware製品を使う日が来る可能性がある。いずれにしても、何らかの仮想化基盤がなくてはハイブリッドクラウドやマルチクラウドを構築できない。仮想化基盤としてはVMware製品以外にもオープンソースソフトウェア(OSS)の「OpenStack」やNutanix製品などの選択肢がある中、Broadcomが自社の選択肢を最善のものにし、覇権を狙っているのは明らかだ。今後の展開が興味深い。
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