“5G強化版”であり“6G予告版”でもある「5.5G」の進化とは?「5G-Advanced」が来る【後編】

5Gの進化系である「5G-Advanced」はどのような機能が強化されるのか。6Gが登場する前に、どのようなモバイルネットワークの進化が見られるのか。

2024年05月22日 08時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

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 「5G」(第5世代移動通信)と「6G」(第6世代移動通信)の間の技術である「5G-Advanced」(一部ベンダーは「5.5G」と呼称)は、早ければ2024年中に商用化する可能性がある。標準化団体の「3rd Generation Partnership Project」(3GPP)によれば、5G-Advancedは2024年6月に5Gの新たな仕様である「3GPP Release 18」として標準化が完了する計画だ。どのような機能が強化される見込みなのか。

「5.5G」は「5G」からどう進化したのか

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 5G-Advancedでは主に以下の点が強化される。

  • 複数の通信用アンテナを同時に使う伝送技術「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)による通信容量
  • カバレッジ(通信可能な範囲)
  • 「RedCap」(Reduced Capability New Radio)
    • 通常は100MHz単位のチャネル(データ送受信用の周波数帯)幅で通信する5Gにおいて、IoT(モノのインターネット)デバイス向けに、より小さなチャネル幅を割り当てる技術。

 具体的な機能としては以下のものが実装される。

  • モバイル通信用の電波で、同時にセンシング(センサーによる計測)を実施する「HCS」(Harmonized Communication and Sensing:通信の調和とセンシング)
  • 通信のトラブルや設定を自動で修正する「自律型知能」
  • 「パッシブIoT」(外部から電源を供給するIoT)

 5G-Advancedは、スマートシティーのインフラに成り得る。自動走行車、スマートトラフィック(物体追跡技術を用いた交通システム)、スマートヘルス、防衛と安全保障、産業用メタバースなどの領域で活用される可能性がある。

 調査会社ABI Researchは報告書「5G-Advanced and the road to 6G」(5G-Advancedと6Gへの道のり)において、5G基地局全体の75%が2030年までに5G-Advancedにアップグレードされるものの、企業市場ではその比率は約半分になると予測している。無線基地局当たりの5G-Advanced接続デバイスは、商用化の初期段階である2024年から2026年頃に急速に普及すると同社は予測する。

5G-Advanced開発の進展

 5G-Advancedのエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)は拡大している。5G-Advancedを開発する通信機器ベンダーには、Nokia、Ericsson、Huawei Technologies、Samsung Electronicsなどがある。チップセットではQualcomm TechnologiesとMediaTekが挙げられる。

 デバイスではAppleの「iPhone 15」、Samsung Electronicsの「Galaxy S24」、vivo Mobile Communicationの「X100 Pro」、OPPOの「Find X」が先陣を切っている。

 5G-Advancedを、24GHz帯以上の周波数である「ミリ波」で扱う通信事業者は世界各国に存在している。フィンランドのDNA、スペインのVodafone Espana、香港のHong Kong Telecommunications、タイのAdvanced Info Serviceなどの幾つかの事業者は、既に10Gbpsの通信速度が可能なミリ波ネットワークをテストしている。

 業界団体の5G Americasが2023年に発表したホワイトペーパー「The Evolution of 5G Spectrum」は、7.125GHzから15.35GHzの周波数帯が、既存のインフラを活用して通信容量を増やすための鍵になると強調している。

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