5Gの進化版「5G-Advanced」(5.5G)は、早ければ2024年中に商用サービスが開始する。5G-Advancedは5Gとは何が違い、なぜ必要なのか。
次世代の無線通信である「6G」(第6世代移動通信)について、世界各国で研究が進んでいる。研究機関は、6Gの機能と、2030年以前に商用化される可能性のあるユースケース(想定される使用例)の検討に余念がない。
ただしその6Gよりも早く、2024年中に5Gの進化系である「5G-Advanced」(一部ベンダーは5.5Gと呼称)が商用化し、複数のユースケースが実現する可能性がある。5G-Advancedは、5Gとは何が違うのか。
「3G」(第3世代移動通信システム)以来、通信の世界では、およそ10年ごとにモバイルネットワークの世代が変わってきた。新世代の無線通信技術はどれも、その前世代と比べて通信速度の高速化とレイテンシ(遅延)の低減といったパフォーマンス向上が実現するよう設計されてきており、アプリケーションやユースケースにおいて、以前は実現しなかった新しい領域をもたらしている。
5G-Advancedを5Gと6Gの中間期と見なしたくなるが、進化の幅としては歴代の世代交代と比べて遜色はない。5G-Advancedは5Gの最初のバージョンと比較して明確なパフォーマンスの向上をもたらし、新しいユースケースを可能にする。
6Gは、物理空間と仮想空間の間で重要な橋渡しとなり、新しいユースケースを可能にすると同時に、業界のオペレーションを最適化することが期待されている。6Gが提供する機会は、2030年の社会とビジネスの基礎を形成し、新しく統合された機能によってデジタル化が大幅に進展する可能性がある。
しかし、このような2030年の社会が実現する前に、トラフィック(ネットワークを流れるデータ)の継続的な増大に対処するため、従来の5Gネットワークを強化する必要がある。
5Gと比較して5G-Advancedは、より広範なユースケースを可能にするために、より多くの機能を備える。帯域幅、レイテンシ、信頼性を改善するように設計されている。
ユースケースの例としては「VR」(仮想現実)や「AR」(拡張現実)、「MR」(複合現実)といった「XR」(Extended Reality)がある。その他にも、オンラインゲームやビデオストリーミングといった消費者向けから、テレワークやバーチャルトレーニング(オンラインで受講できる講座)など、企業向けも対象となる。
通信事業者は5G-Advancedを通して、特定の業界や分野に焦点を当てた市場(垂直市場)向けのエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)の構築に取り組んでいる。これは通信回線からその上のサービスまで、1社による垂直統合型の仕組みで提供する考え方だ。
モバイルネットワークを基盤とした垂直統合サービス実現のためにトラフィックのスループット(一定時間内に転送される実際のデータ量)、ネットワークカバレッジ(通信可能エリア)、省電力、異常検知の改善が続くだろう。
5G-Advancedは、完全に自動化されたネットワークと持続可能な未来を目指して、機械学習などの人工知能(AI)技術や、ネットワークの省エネルギー化のために構築されたモバイルネットワーク規格だ。実際、ネットワーク利用の急速な増加や、ユースケースの複雑化が予測され、従来の最適化手法では管理し切れなくなると考えられることから、AI技術は将来のネットワークにとって不可欠になるだろう。通信事業者は導入コストを削減しつつ、さまざまなユースケースに使えるようネットワーク性能を確保する必要があるため、ネットワークのエネルギー効率化も重要な観点となる。
次回は5G-Advancedで使われる技術について詳しく説明する。
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