従業員の人員整理を繰り返してきたAWSが、また従業員の大量解雇に踏み切る方針が明らかになった。今回の解雇の背景には何があるのか。
クラウドサービスベンダーのAmazon Web Services(AWS)が再び人員整理に取り組む。この決定の影響を特に受けるのは、トレーニングや認定資格、販売などの業務に携わる従業員だとみられる。従業員は2024年4月3日(米国時間)、社内のメールで人員削減を知らされたという。2023年にも大量の人員削減に踏み切っている同社は、なぜ人員を削減するのか。
米国のニュースサイト「GeekWire」の報道によると、AWSは数百人の従業員を解雇した。GeekWireの記事では、AWSが自習型の認定資格により力を入れることを目指すために、トレーニングプログラムの運営を外部の第三者機関に委託することが原因だと報じられている。
AWSの従業員は、同社のシニアバイスプレジデントであるマット・ガーマン氏から人員削減についてのメールを受け取った。ガーマン氏は解雇の理由を次のように説明している。「信じられないほどに移り変わりの激しい業界で事業を展開しているため、組織としての俊敏性を保つことが重要だ。当社が進める変化は、将来を見据えて準備し、計画や優先事項に沿って、重複や非効率を減らすことだ」
AWSの広報担当者は英ComputerWeeklyに次のように説明した。「社内で効率を高める必要のある分野を幾つか特定し、最大の効果をもたらすと考える重要な戦略分野に引き続き力を注いでいく。顧客にイノベーションを届けることを目的に人材への投資、雇用、最適化を継続するためには必要なことだ」
2023年にもAWSは人員整理に踏み切った。AmazonのCEOアンディ・ジャシー氏は2023年3月、従業員にメールを送り、AWSのライブストリーミングサービス「Twitch」やAmazonの店舗運営や人事に関係するPeople Experience and Technology Solutions(PXT)部門、広告部門を中心に合計9000人の人員を整理すると伝えている。
AWSは2023年1月にも、1万8000人を解雇した。この時の解雇は、2020年初頭に起きた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によって、テレワークが普及したことを背景に急増したクラウドサービスの需要を満たすために雇用した人員を整理することが目的だった。
調査会社Forrester Researchでプリンシパルアナリストを務めるリー・サスター氏によると、今回の人員整理は、競争の激化やクラウドサービスに対する顧客の変化にAWSが対処した結果だという。
AWSの直近の決算報告では、同社の顧客の大半が、クラウドサービスにおけるIT資産の管理コストの最適化に取り組んでいることが繰り返し言及されている。顧客がパンデミックで急増したIT支出の削減に取り組んだ結果、AWSの需要が減速し、レイオフ(一時解雇)につながった。
「企業がAI(人工知能)技術を扱うためのクラウドサービスへの支出が、Microsoftの『Microsoft Azure』やOracleの『Oracle Cloud Infrastructure』のような競合クラウドサービスや、AI技術を重視する新しいクラウドサービスに流れていることにも原因がある」とサスター氏は分析する。
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