レガシーアプリケーションのモダナイゼーションを成功させるにはどうすればいいのか。「7つのR」に沿ったモダナイゼーションの手法を紹介する。
クラウドサービスを活用しながら、従来使用してきたレガシーアプリケーションのモダナイゼーションを実施する手法として、「7つのR」に沿った進め方がある。調査会社Gartnerが提唱した基本となる戦略モデルを、Amazon Web Services(AWS)が拡張したものだ。それぞれ7つのRにどのように取り組めばいいのか、以降で具体的に見てみよう。
7つのRは以下の通り。クラウドサービスを活用したモダナイゼーションを進める際の指針となるものだ。
リホストはアプリケーションをモダナイゼーションするための最もシンプルな手法だ。「リフト&シフト」と呼ばれることもある。
リホストの分かりやすい例として、ローカルにインストールしたオフィススイートをSoftware as a Service(SaaS)に移行することが挙げられる。SaaSの利用によって拡張がしやすくなることがメリットの一つだ。SaaSはインフラを用意する必要がなく、移行コストを抑えられる可能性があることもメリットだ。
リロケートとは、オンプレミスの仮想化インフラからクラウドサービスに仮想マシンを移行することを指す。アプリケーションそのものではなく、アプリケーションをホストするインフラを変更するということだ。リロケートのメリットの一つは、データセンターを自社では用意せず、クラウドサービスベンダーのデータセンターを利用できることだ。
リロケートのメリットはコスト抑制だけではない。アプリケーションへのアクセスしやすさや拡張性、信頼性の向上といった利点もある。例えば、自社データセンターでMicrosoftのハイパーバイザー「Hyper-V」を使い、仮想マシン10台を運用している企業があるとする。その仮想マシンをクラウドサービス群「Microsoft Azure」に移行すれば、システムの拡張がしやすくなる。
プラットフォーム(インフラ)を変更し、そのプラットフォームに応じてアプリケーションを最適化するリプラットフォームによって、アプリケーションのパフォーマンスの向上やセキュリティの強化などができる。コーディングするためのリソースが必要になることがあるが、それでも新しいアプリケーションをゼロから構築するよりは安価かつ迅速にモダナイゼーションが可能になる。
リプラットフォーム後のアプリケーションはクラウドネイティブアプリケーションとの連携が可能になる。重要なビジネスアプリケーションのリプラットフォームに取り組む場合は、アプリケーション開発者、システム管理者、クラウド管理者、データベース管理者などがチームを組み、密に連携することが重要だ。
アプリケーションのリファクタリングでは、アプリケーションの主要なソースコードに大幅に手を加える必要があることがある。「リアーキテクティング」とも呼ばれる。主要ソースコードの変更によって、アプリケーションの機能を拡張したり、パフォーマンスを向上させたりできる。ただし、リファクタリングにはアプリケーションの設計の全面的な見直しが必要になる。そのため、他の手法よりも複雑で、コストもかかる。
重要なビジネスアプリケーションをリファクタリングする際には、高額な初期コストが発生する可能性がある。組織はリファクタリングによって得られるメリットとコストをてんびんにかけ、リファクタリングに踏み切るかどうかを慎重に判断しなければならない。とはいえ、ゼロからアプリケーションを作り直すことに比べたら、リファクタリングの方が安価になることが多い。
アプリケーションの再購入を指す。リファクタリングやリプラットフォームにコストがかかり過ぎると判断した場合は、再購入を検討するといいだろう。リパーチェスのメリットは、他の手法より労力が少なく、すぐに移行を完了させられる可能性があることだ。ただし、新しいアプリケーションを選定するための調査や、新しいアプリケーションへのデータ移行にリソースが必要になる。新しいアプリケーションのベンダー選定に当たり、製品に加え、技術サポートや移行支援サービス、保守サービスがあるかどうかも確認しておこう。
アプリケーションのリタイア(廃止)を決めるに当たり、まず、そのアプリケーションが実際に使われているかどうかを確認する必要がある。アプリケーションがもはや使われておらず「不要」と判断したら、廃止プロセスに着手する。もし廃止するアプリケーションを利用している一部のユーザーがいる場合は、新しいアプリケーションのトレーニングを提供するといい。
例えば、遠隔拠点にレガシーの在庫管理システムが存在し、少数の従業員が利用しているといったケースが考えられる。利用中のユーザーに新しいアプリケーションの使い方をレクチャーし、1〜2カ月間程度のトライアル期間を設けて新しいアプリケーションの利用を本格開始すれば、スムーズに移行ができるだろう。
アプリケーションのリタイアは、基本的にそれほど多くの費用と時間を必要としない。ただし、新しいアプリケーションを用意し、レガシーアプリケーションがなくても業務を維持できることが前提になる。
業務に必要だが、クラウドサービスへの移行候補としてはまだ現実的でないアプリケーションがある。例えば、リファクタリングやリプラットフォームを実施するには時間や費用がかかり過ぎたり、サードパーティー製アプリケーションでは必要な機能を実現できなかったりするアプリケーションがそれだ。
アプリケーションのリファクタリングやリプラットフォームを計画していても、優先度の高い他のアプリケーションの移行に専念しなければならず、移行が遅れるケースもある。アプリケーションを保持すると、費用負担も現状維持になるため、追加コストの発生を避けられる。
アプリケーションのモダナイゼーション計画を検討する際は、コストとパフォーマンスが大きな検討事項になる。パフォーマンスの向上によってユーザー体験の改善につながる。しかし予算が限られている中、費用をどう抑えるかも考えなければならない。上記で紹介した手法から自社に最適なものを選ぶために、以下の質問が指針になる。
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