レイオフに踏み切る動きがある一方で、雇用情勢はいまだ好調な米国IT業界。一見矛盾した、こうした状況の背景には何があるのか。積極的な増員に踏み切る企業の狙いは。
米国ではOracleなどの大企業が人員のレイオフ(一時解雇)を開始し、景気後退の懸念が高まっている。だが米国労働省が2022年8月に発表した同年7月の雇用統計では、雇用は引き続き好調だ。特にIT業界の採用活動が続いている。統計データによれば、米国の就業者数は同年6月から7月の間に52万8000人増え、失業率は3.5%に低下した。
人材紹介会社Robert Halfのボストン地域ディレクターを務めるジョシュ・ドリュー氏は「雇用市場は依然として熱い。以前ほどの“白熱”状態ではないとしても、まだ“赤熱”状態だ」と語る。同社が2022年7月に企業の管理職1500人以上を対象に実施した調査では、回答者の46%が2022年下半期に全ての部門で増員を計画していると答え、人員を削減すると答えた回答者はわずか2%だった。
OracleやShopifyなど、人員削減に踏み切る企業があるものの、米国では採用活動が活発化している。ただし前述のRobert Half調査によれば、回答者である管理職の88%が「高い技能を持つ人材の確保が難しい」と回答している。「数の限られた人材の獲得をめぐる競争は依然として激しい」とドリュー氏は説明する。調査・コンサルティング会社Computer Economicsのシニアリサーチディレクターを務めるデービッド・ワグナー氏も同様の見解を持っており、積極採用の意向を持つ企業は増加傾向にあるという。
IT人材の雇用が好調な要因の一つは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みだ、とワグナー氏は考察する。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)とロックダウン(都市封鎖)を経験して、デジタルビジネス計画の必要性が浮き彫りになり、IT活用が加速した」と同氏は説明する。
開発者やアナリスト、データサイエンティストなどを中心に、積極採用が進んでいるという。「かつてIT部門はコストセンターであり、景気が悪いときは削減の対象だったが、今では不況を切り抜けるための解決策の一つになった」(ワグナー氏)
前述の通り、2022年7月の米国における新規就業者は52万8000人だった。そのうちIT企業による雇用は1万2700人だったと、IT業界団体CompTIA(Computing Technology Industry Association)は推計する。CompTIAによると、IT業界の雇用は2022年に14万3700人増え、前年比約55%増となった。同月のIT関連職の求人件数は約48万4000件で、前月よりわずかに減少した。
CompTIAの最高調査責任者を務めるティム・ハーバート氏は次のように述べる。「このデータが裏付けるように、レイオフの発表もある一方で、IT人材を獲得する機会をつかもうとしている企業もある」
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