クラウド管理のスキル不足は、ビジネスにとって大きなマイナスだ。プロジェクトは未完成のまま放置され、セキュリティは低下し、イノベーション(技術革新)は後回しにされる。企業やエンジニアはどう対処すべきか。
クラウド管理のスキルを持つ人材の不足がビジネスに与える影響は深刻だ。クラウドコンピューティングはセキュリティ、俊敏性、柔軟性(変化に迅速に対処する能力)を高めるための技術だが、適切に管理されなければそれらは達成できない。最新のセキュリティ課題やパフォーマンス向上の手法を理解している熟練管理者がいなければ、クラウドサービス導入が中途半端なものとなりかねない。企業やエンジニアはどう対処すべきか、専門家の調査を基に探る。
IT業界では常にスキルギャップについて議論されている。調査会社IDCは、2026年までに90%以上の組織がITスキル不足に直面し、そのために5兆5000億ドルの損失を被るだろうと指摘している。中でもクラウド管理スキルの不足が大きな割合を占めると予測されている。
2025年4月現在、訓練を受けたクラウド管理者は需要が高い。クラウドサービス市場は成長を続けており、調査会社Gartnerは2025年のパブリッククラウドサービスにおける世界のエンドユーザー支出が7234億ドルに達し、2024年の5957億ドルから約21.5%増加すると予測している。
不適切なクラウドサービス導入がもたらす影響として、以下の点が挙げられる。
米国労働省労働統計局(BLS:Bureau of Labor Statistics)は、2023年から2033年にかけて、ネットワークおよびコンピュータシステム管理者の雇用が3%減少すると予測している。これは、クラウド専門スキルへの需要シフトを示唆しており、一般的なIT管理者から高度なクラウド専門家への転換が進んでいることを表している。
企業はこの問題にどう対処しているのか。エンジニア採用サポート企業Karatのレポート「2024 Tech Hiring Trends」によれば、以下の2つのトレンドが浮上している。
AI(人工知能)技術も成長と進化を続けていることを忘れてはならない。クラウド管理者の不足とクラウドサービスにおけるAIサポートのニーズが重なり、課題となっているのが現状だ。
クラウド管理スキル不足の背景には、以下の2つの要因がある。
不足している主なクラウド管理スキルには以下のようなものがある。
クラウド管理分野に参入しようとするエンジニアは、これらの不足分野をキャリアの安定性と新たな機会の獲得に役立てよう。既にクラウド管理者であるなら、キャリアのさらなる発展をこれらの分野に向けるべきだ。
例えば、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)の専門家であれば、クラウドサービス群「Microsoft Azure」のスキルを広げることを検討しよう。仮想マシン(VM)のプロであればコンテナ技術に進出するのも一案だ。日々のクラウド管理業務に疲れているなら、クラウドネイティブアプリケーション開発に転向するのも選択肢となる。
AI分野も忘れてはならない。Karatのレポートによると、2024年には採用担当者の60%がAIエンジニア職を募集しており、その割合は2023年の35%から増加している。2025年もこの傾向は続くだろう。
クラウドサービス分野のスキルを高めるためには、以下を検討するとよい。
自社が募集しているポジションを調べ、その役割に適したスキルを付けるとよい。経験豊富な管理者が指導やアドバイスを提供してくれる場合もあるため、積極的に学ぶ姿勢が重要だ。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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