AI技術の利用が広がることを受けて、データセンターの設計や立地に変化が生じている。データセンターのインフラや設備は、AI技術の利用拡大からどのような影響を受けているのか。
人工知能(AI)技術を利用することが当たり前になり、それがデータセンターの設計に世界規模で影響を及ぼしている。データセンター事業者や企業のデータセンター運用担当者は、設備の選定と管理の方法を見直さざるを得なくなりつつある。
商用不動産と投資運用管理を手掛けるJones Lang LaSalle(JLL)は、2024年1月に報告書「Data Centers 2024 Global Outlook」(2024年のデータセンターの世界的な見通し)を公開した。データセンターで運用するインフラや各種設備、データセンターの立地などにAI技術はどのような影響を与えるのか。報告書を基にまとめる。
JLLは報告書で、企業のAI技術の採用が進むことで全世界のデータセンターのストレージ容量が2023年の10.1ZB(ゼタバイト)から2027年には21ZBに増加すると予測している。
JLLで欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域の責任者とデータセンターソリューションのグローバルチェアを務めるジョナサン・キンゼイ氏は次のように語る。「データセンター業界は、消費電力量の増大に伴い、再生可能エネルギーの必要性に直面している。データセンターを運用する際の拡張性を確保しつつ、サステナビリティ面での目標を達成するには、戦略的にデータセンターの立地を選定することが最重要事項になる」
既存の送電インフラは、再生可能エネルギーへの移行を進めるときの障壁となる可能性があると、キンゼイ氏は指摘する。「将来の十分な電力量を確保するには、不動産の専門家がコロケーション事業者やクラウドベンダー、ユーザー企業と密接に連携することがますます重要になる」(同氏)
データセンター事業者が用意しなければならないコンピューティングリソースは今後も増加を続けるため、データセンターの設置面積や設備調達の計画に大きな影響を及ぼすとJLLは予測する。
「2014年頃に建設された一般的なデータセンターは、受電容量が10メガワット未満だった。ところが今や、100メガワットのデータセンターが建設されるようになった」とJLLは報告書で述べている。
JLLによると、冷却は平均的なデータセンターの電力使用量の約40%を占めるという。冷却コストを抑えるために、データセンター事業者は冷却方法を従来の空気冷却から液体冷却へと移行させつつある。
生成AI(ジェネレーティブAI)の普及は、データセンターに必要な面積と電力量の増大に拍車を掛けた。それに伴い、さまざまな課題が生じている。例えば一般的な企業向けアプリケーションを実行する従来型のデータセンターと、AIアプリケーションの処理に特化したデータセンターでは、設計に大きな違いがある。
「AIアプリケーションに特化したデータセンターでは、処理するデータの種類や生成AIの技術進化に合わせて、電力設備の計画やコンピューティングリソースの設計を変更する必要が生じる可能性がある」と、JLLは指摘する。
AIアプリケーションはエネルギーを大量に消費する。データセンターの運用担当者は、データセンター設備のエネルギーの需要とサステナビリティ戦略のバランスを取る最適な方法を模索する必要がある。生成AIアプリケーションを稼働させるデータセンターの受電容量の要件は、300〜500メガワット以上に及ぶこともある。データセンターの運用担当者は電力消費を抑える設計にするのと同時に、データセンターを設置する地域の自治体と連携し、再生可能エネルギーの利用を検討する必要がある。
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