企業において生成AI導入が進む中、データセンターではハイブリッドクラウドに焦点が移りつつある。オンプレミスインフラで予測される変化を3つの視点で解説する。
企業の間で、生成AI(人工知能)の導入が急速に進んでいる。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)がまとめた調査レポート「Navigating the Evolving AI Infrastructure Landscape」によると、社内でAI技術の活用に携わるIT担当者の92%が、2024年中に生成AIの取り組みを始める計画だ。
生成AIへの投資は、クラウドサービスに限定されるものではない。同レポートによると、企業の30%は、AI技術関連のインフラを主にハイブリッドクラウド(オンプレミスとクラウドサービスを併用するインフラ)で導入する計画だと回答した。2024年は、企業がオンプレミスインフラや運用管理のモダナイゼーション(最新化)に注力し、他のデジタル業務と併せて、生成AIの活用に取り組む年になる。
このような観点から、2024年のオンプレミスインフラについて3つの予測をしよう。
ESGの調査では、「サービスとしてのオンプレミスデータセンター」が企業経営を加速させ、オンプレミスインフラの総所有コストを低減させることが分かった。これはサービス提供事業者がハードウェアを所有し、インフラの構築からメンテナンス、ネットワーク設定など、データセンター運営に必要な作業を代行するものだ。
このようなメリットがあるものの、導入をためらう企業もあると考えられる。その要因は、社内の経理上のルールや予算上の制限だ。だが優先順位が高い生成AIの取り組みがあると、サービスとしてのオンプレミスデータセンターを導入する意思決定がしやすくなる。
サービスとしてのオンプレミスデータセンターを実現する製品やサービスは、すでに市場に出回っている。例えば「Dell Technologies APEX」や「HPE GreenLake」といったサービスが挙げられる。
当面の間、ハイブリッドクラウドは標準的な運用モデルであり続ける。ESGが実施した別の調査「Multi-cloud Application Deployment and Delivery Decision Making」によると、98%の企業は、個々のコンポーネントがオンプレミスインフラと複数のクラウドサービスに分散したアプリケーションを運用している。
コンポーネントが分散するとアプリケーションの複雑性が増すことになるが、企業は生成AIを導入することでオンプレミスインフラと複数のクラウドサービスにまたがるデータを扱いやすくなる。意思決定者は、オンプレミスインフラとクラウドサービスの両方で一貫した体験を提供できるツールや技術への投資に注力するだろう。
そうした機能を備えた製品は、Broadcom(旧VMware)やNutanix、Red Hatなどが提供している。Dell Technologiesのサービス群「Dell APEX Cloud Platforms」は、クラウドサービス群「Microsoft Azure」の機能や、BroadcomやRed Hatの製品・サービスの機能をサービスとして提供している。ストレージについてはHitachi Vantaraが、クラウドストレージ間で一貫性を確保するように設計したストレージ管理ツール群「Hitachi Virtual Storage Platform One」を2023年10月に発表した。
最近までIT部門を悩ませていた問題は、データの急増にどう対処するかということだった。しかしこの問題は、ストレージ技術の革新によって、企業にとってはそれほど大きな懸念事項ではなくなる。むしろ、データの管理方法とその管理場所に関する問題が大きい。言い換えれば、企業ではスケーラビリティ(拡張性)よりシンプルさを優先するようになっている。
すでに低遅延でモダンなストレージシステムに投資している企業は、生成AIへの取り組みを受け、ストレージシステムの活用範囲を拡大させる可能性がある。
Pure Storageのフラッシュストレージアレイ「FlashArray//E」シリーズやNetAppのフラッシュストレージアレイ「AFF C」シリーズなどは、大規模なシステム統合に役立つ。これらの製品は、AI技術のワークロード(処理するタスクや作業)を特にターゲットとしているわけではない。だが生成AIを活用するためにこれらの製品を使ったストレージ刷新がきっかけとなり、システムの大規模な統合が動き出す可能性がある。
近年、データとアプリケーションの焦点はクラウドサービスに向けられていた。だが2024年、生成AIは人々の関心をデータセンターに引き戻す存在になる。オンプレミスインフラ関連のサービスでイノベーションが起きつつある中で、生成AIが企業のモダナイゼーションの手法を見直すきっかけになることが期待できる。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
生成AIを活用して業務や顧客体験の再構築を進める動きが活性化しているが、その多くが、PoCやラボ環境の段階にとどまっている。なぜなら、生成AIの可能性を最大限に引き出すための、インフラのパフォーマンスが不十分だからだ。
昨今のソフトウェア開発では、AIコーディングアシスタントの活用が主流になっている。しかし、最適なコーディングアシストツールは、開発者や企業によって異なるという。導入の際は、どのようなポイントに注意すればよいのか。
生成AIの活用にはデータベースが重要となるが、従来のデータベースは最新テクノロジーに対応できないなどの課題がある。本資料では、データベースをモダナイズし、生成AIを用いてビジネスイノベーションを生み出すための方法を探る。
ビジネスにおいて、検索体験およびその結果の質の向上が重要なテーマとなっている。顧客はもちろん、自社の従業員に対しても、実用的な答えをより迅速に、手間なく入手できる環境の整備が求められている。
登場以来ビジネスへの活用方法が模索されてきた生成AI。近年では業務組み込みにおける具体的な成功例が数多く報告されている。本資料では、5件の生成AI活用事例を交えて、業務に組み込む上での具体的なアプローチを解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。