オンプレミスのストレージからクラウドストレージに移行しても、思っていたよりもメリットを感じられない場合がある。なぜ「オンプレミス回帰」が起きるのか。最初に検討すべき観点から考える。
クラウドストレージの利用が広がる一方で、一般的に語られるその利点には疑いの余地が見られるようになった。以前と比べて、クラウドストレージの導入に踏み切ることは容易ではなくなっている。
企業がクラウドサービスに移行する主な理由には、コストやスペースの節約、ストレージ容量の拡張性確保、緊急時における復旧の容易さなどがある。ただし企業によっては、クラウドストレージの運用経験を踏まえ、その利点を再検証している最中だ。実際に検証した結果、データをクラウドストレージからオンプレミスのストレージに戻すことが、最も合理的だと判断する企業は少なくない。本連載は、そうした“オンプレミス回帰”が起こる4つの理由を取り上げる。
クラウドストレージへの移行は、データ、データベース、アプリケーションといったリソースを、自社の施設からオフサイトの管理施設に移すことを意味する。IT管理者はかつて、これらのリソースの管理を外部に移行すれば、社内の人件費などの経費を削減できると信じていた。
リソースをクラウドサービスに移行する場合、数年を掛けて段階的、計画的に移行するアプローチが望ましい。まず小規模なアプリケーションから始めて、徐々に大規模なアプリケーションを移行するとよい。このアプローチはリスクを抑えつつコストを最適化できるといった理由により、投資利益率(ROI)の最大化につながりやすい。だが一部の野心的な企業は、クラウドストレージへの急激な移行を決定し、テラバイト規模のメモリが必要なアプリケーションを早急に移行している。このようなケースでは、クラウドストレージのコストが想定以上に膨らみ、当初の予算には含まれていなかった意外なコストや隠れたコストが発生することがしばしばある。
クラウドストレージで管理するアプリケーションを事前に検討することは、コストをコントロールする上で重要だ。クラウドストレージでの実行を踏まえて、システムをどのように構成するのかを移行前に検討しておく必要がある。
単純にオンプレミスシステムをそのままクラウドサービスに移行させる「リフト&シフト」では、クラウド移行が成功しない場合がある。その理由の一つが、クラウドベンダーによる複雑な料金設定だ。ストレージの利用量に応じて課金するクラウドベンダーもあれば、時間単位や月単位で課金するクラウドベンダーもある。こうした料金設定のために、企業がクラウドサービスのコストを事前に正確に見積もることは難しい。ストレージ用途でクラウドサービスを使う場合であっても、セキュリティやネットワーク、管理、監視ツールなど、ストレージサービス以外に追加で支払いが必要なことがある。
クラウドストレージの検討事項はコストだけではないものの、コストが重要であることは間違いない。データ量単位当たりのコストを分析したところ、期待された節約効果が得られない場合がある。その場合、クラウドストレージからオンプレミスのストレージに戻すことを検討するのも手だ。クラウドストレージの使い始めのうちはROIが高くても、時間がたてばオンプレミスに回帰した方が有利になる可能性もある。
次回は、2つ目と3つ目の理由を取り上げる。
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