公式か非公式かにかかわらず、私物端末の業務利用(BYOD)が拡大している。企業はどのようなBYODポリシーを検討すればいいのか。4つのポイントを紹介する。
企業が公式に承認しているかどうかに関わらず、従業員による私物端末の業務利用(BYOD)は広がっている。データの安全性を重視する企業は、厳格なデータ保護ポリシーを策定し、業務用端末と個人用端末を明確に分ける傾向にある。一方で従業員は利便性を優先し、ポリシーを無視して非公認のBYODを実践している可能性がある。
非公認のBYODはさらなるリスクを招きかねないため、何らかの対策を講じることが企業にとって急務だ。BYODを公式に導入することも一つの手だ。本稿は、企業がBYODポリシーを策定することで得られる4つのメリットを紹介する。
BYODのメリットの中でも特に数値化しやすく分かりやすい効果が、ハードウェア導入コストの削減だ。BYODでは従業員が端末購入コストを負担することになるが、従業員の利益を大きく損なうものではない。大半の場合、従業員は既に所有するデバイスに業務用の機能を追加することになるからだ。
コスト削減効果は、導入時だけでなく更新サイクルの中でも感じることができる。端末の更新サイクルが3年の場合を考えてみよう。新しい端末の購入コストを浮かすことで、組織は1人当たり年間数百ドルを節約できる可能性がある。端末が故障した場合も、一般的にBYODでは従業員が対処する。端末買い換えコストの一部をBYOD給付金として従業員に還元することも検討できるだろう。
従業員の満足度向上もBYODがもたらすメリットの一つだ。満足度は定量化が難しいが、毎日2台のスマートフォンもしくはノートPCを持ち歩く必要がなくなれば、従業員の働きやすさは改善するはずだ。
セキュリティ系メディアCybersecurity Insidersのレポート「BYOD Security Report」では、BYODのメリットとして回答者の53%が「従業員の満足度向上」を挙げ、2位の結果となった。調査は2021年4月、セキュリティ専門家271人を対象にオンラインで実施した。
BYODを導入する大きなメリットが従業員の生産性向上だ。Cybersecurity Insidersのレポートでは、回答者の68%が「BYOD導入により従業員の生産性が向上した」と回答し、1位の結果となった。BYODが生産性向上につながる理由はさまざまだが、主な理由の一つに「端末の慣れ」の問題がある。普段からApple製品を使用しているユーザーにとってモバイルOS「Android」やクライアントOS「Windows」を搭載する端末は扱いづらい傾向がある。その逆も同じだ。Android端末のユーザーでも、Samsung製のデバイスからGoogle製のデバイスに切り替えることは簡単ではない。
私用端末を業務に利用している従業員は、比較的いつでも仕事の資料や社内システムにアクセスしやすいと言える。業務用端末と私用端末を分けている場合、業務時間外は業務用端末の電源を切っていて連絡が取りにくい可能性がある。
BYOD導入の目的は、従業員に業務時間外でも仕事やメールチェックをさせることではない。一方で、即時承認が必要な場合や緊急事態が発生した場合は、従業員とすぐに連絡を取れることが重要だ。例えば、経営幹部が締め切り間際になって予算を承認する必要がある場合や、データ漏えいが発生した場合を考えてみよう。経営幹部と直接連絡が取れる手段が確保されていれば便利かつ安心だ。
上述したBYODの利点は、COPE(業務端末の私的利用)でも実現可能だが、業務用端末をメイン端末として使用する場合に限られる。
中編も、引き続きBYOD導入が企業にもたらすメリットを紹介する。
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