軽さや処理性能、バッテリーの持ちだけがノートPCの評価基準ではない。意外と満足度を左右するのが、内蔵スピーカーの性能の良しあしだ。内蔵スピーカーでがっかりしないための選定ポイントを紹介する。
毎年数え切れないほどのノートPCを実際に試してきた経験から、ある程度確信を持っていえることがある。それは「ノートPCには一般的に最高品質のオーディオスピーカーが搭載されることはない」ということだ。TechTargetのノートPCレビュー記事では、ノートPCのスピーカーが物足りないために、ヘッドフォンやBluetoothスピーカーを携帯するように勧めることが珍しくない。
ノートPCの内蔵スピーカーを使う機会がそれほどない場合でも、使いものになるスピーカーセットを搭載したノートPCを所有するメリットは多い。複数の人に動画を再生しなければならない状況が生じたり、めいっ子やおいっ子がビデオゲームで遊びたがったりしたらどうだろうか。所有しているノートPCのスピーカーが標準以下の性能だと、いつになく申し訳ない気持ちになるだろう。
本稿では、ノートPCの内蔵スピーカーについて調べるべきことを詳しくまとめた。
ほとんどのノートPCは、スピーカーを2基搭載する。これはステレオ構成と呼ばれるものだ。一方シングルスピーカーのノートPCはモノラル構成になる。モノラル構成とステレオ構成とを比較した場合、ステレオ構成の主なメリットは各スピーカーの出力タイミングを調節して、指向性のある音を作り出せることだ。これにより特定の方向から音が飛んできていると脳に認識させることができる。
一般的にモノラル構成を採用するノートPCは、設計上の理由からスピーカーを2基組み込めないものに限られる。言い換えれば、そのようなノートPCは小型でコンパクトにまとめられていたり、非常に特殊だったりする。理由が何であれ、ノートPCの音質にこだわりがあるなら、モノラル構成のノートPCは避けるのが賢明だ。
TechTargetでレビューをしたモノラル構成のノートPCの中で一番新しいのは、パナソニックの2-in-1デバイス(ノートPCとしてもタブレットとしても利用できるデバイス)である「TOUGHBOOK CF-20」だ(写真1)。このレビューを担当したバーニー・モリセットは、オーディオパフォーマンスについて次のように苦しげにまとめている。「オーディオに関しては、タブレット部に比較的大きくクリアな音を出力するスピーカーが配置されている。ビープ音や『ピッ』という音については問題なく機能するだろう。ただし音楽の再生についてはヘッドフォンに委ねたい」(TechTargetジャパン記事「『TOUGHBOOK CF-20』は他にないタフネス2-in-1、日常使いもあり?」から)
性能の高くないスピーカーを4基搭載するよりも、馬力のあるスピーカーを2基搭載する方が好ましい――。これが、オーディオ面で優秀なノートPCに求められるスピーカー数についての一般論だ。音が適切に増幅されていれば、大型のスピーカーは小型のスピーカーより大音量で出力できる。その上、大型スピーカーは小型なものと比べて音が豊かになる傾向がある。大型スピーカーの方が、単純に潜在的なパフォーマンスが高くなるのだ。
小型のスピーカーで、サイズに見合ったものより大きな音を出力する技術は非常に進歩しており、特にスマートフォンで顕著だ。これは実際にパフォーマンスが向上したというよりも、ソフトウェアでごまかしている部分が大きい。どのような種類のオーディオでも、一定水準の音を求めるなら、まともなサイズのスピーカーが何よりも必要になることに留意してほしい。ノートPCの場合は、できるだけ大きなスピーカーを捜し求めることになる。それでも大型ヘッドフォンで採用されているスピーカー程度の大きさにしかならないが。
世界最高水準のスピーカーセットでも、向きが正しくなければ大して良い音は出せない。ノートPCは音響再生にとって理想的な環境とは言い難い。設計者は、有り物を使って最善の結果を出さなければならない。
パームレストの下にスピーカーを配置することは理にかなっているように見える。だがキーボードに両手を置いているときには、スピーカーが手首で覆われ、多少こもった音になってしまうので最適とはいえない。
理想的なノートPCのオーディオ構成には、ユーザーの両耳とスピーカーのコーン型振動板を一直線で結ぶラインが存在する。つまり、スピーカーはキーボードの両サイドか上部に配置されていなければならない。スピーカーがキーボードの両サイドに配置されているノートPCの例としては、ゲーム向けPCベンダーRazerの「Razer Blade Stealth」が挙げられる(写真2)。
薄型軽量のノートPCに対する継続的な需要により、従来とは異なるノートPCのオーディオが開発されることになった。本体が非常にコンパクトな場合、スピーカーのグリル(保護用ネット)を露出させる領域が残らない場合がある。そのため、スピーカーを本体内部に配置せざるを得ないのだ。
Dellの「Latitude 7480」は、スピーカーを本体内部に組み込んでいるノートPCの一例だ。Latitude 7480のスピーカーは、ユーザーから見て本体の中央前方に配置され、下方向を向いている。ノートPCと接触している面を通じて、音を出力するためだ。この構成は予想以上に適切に機能している。
ただしユーザーの耳まで一直線上にある位置にスピーカーが配置されている場合と比べると、音のクリアさは劣る。スピーカーが底面に配置されている構成(写真3)では、膝、ソファ、ベッドのような柔らかい場所にノートPCを置くと、スピーカーのパフォーマンスが著しく低下する。これは音を出力する能力が大幅に損なわれることに起因する。
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