有線やWi-Fiより「FWA」が選ばれる3つのユースケースとは5G FWAへの期待と現状【第3回】

「5G」(第5世代移動体通信システム)を固定無線アクセス(FWA)で使う「5G FWA」の利用が拡大する見込みだ。FWAに適したユースケースとは。

2023年11月06日 05時00分 公開
[Venus KohliTechTarget]

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 通信機器ベンダーEricssonが2023年6月に発表したレポート「Ericsson Mobility Report June 2023」によれば、ユーザー宅と通信事業者の中継網を無線でつなぐ「固定無線アクセス」(FWA:Fixed wireless Access)の利用が拡大している。FWAサービスのうち、2028年には約80%は「5G」(第5世代移動体通信システム)を用いた「5G FWA」になる見込みだ。

 従来の有線ネットワークの代わりにFWAを使用する理由としては、有線ネットワークではインフラを構築するのが難しい地域であることや、有線と比べて初期費用を抑えやすい点が挙げられる。実際にFWAが適しているユースケースはどのようなものか紹介する。

FWAが役立つ3つのユースケースとは

 FWAのユースケースは以下の通りだ。

人口が限られている地域

 FWAの一般的なユースケースは、農村部や郊外、離島、へき地など人口が限られている地域での利用だ。

 インターネットサービスプロバイダー(ISP)は通常、こうしたエリアでのブロードバンド展開は困難かつ非現実的だと判断しがちだ。仮にブロードバンドサービス用の有線インフラを導入できても、メンテナンスには手間とコストが掛かる。

 ISPが有線によるブロードバンドサービスの代わりにFWAを提供することで、最寄りの基地局から利用者の建物までを結ぶ「ラストワンマイル」にギガビット級のネットワーク接続を実現しながら、運用コストを節約できる。FWAによって人口が限られている地域であっても、企業やテレワーカーが経済的に豊かになるチャンスを提供できる。

仮説オフィスや建築現場

 頻繁にオフィスを移動する企業にFWAは適している。有線ネットワークによるブロードバンドサービスを利用するには、ケーブル引き込み用の工事が必要になるため、一時的なオフィスに導入するのはコストパフォーマンスが悪い。

 FWAなら、「CPE」(宅内設置機器)を購入し、構内に設置する際に1回限りのコストを支払うだけでよい。レンタル形式で提供する事業者もいる。そのため、一時的にネットワーク接続を利用したい場合は、FWAによってコストを抑えることが可能だ。導入や契約解除が優先に比べて迅速な点もメリットだ。

 一般的に、建設現場はレイアウトが複雑であったり、資材の配置が不規則だったりすることがあり、有線ネットワークインフラを設置しにくい。へき地の建設現場では、MVNO(仮想移動体通信事業者)の公衆LTE(Long Term Evolution)が届いてなかったり、届いていても通信品質が悪かったりする。こうした場所にFWAを導入することで、現場作業員やオーナーなどの関係者が、コミュニケーションやコラボレーションのためのクラウドサービスを利用して迅速に情報を共有できるようになり、生産性を高めることができる。

運河沿いの都市

 運河などの水域に挟まれた都市では、有線ネットワークインフラに頼りにくい。イタリアのベニスや中国の蘇州のような運河沿いの都市では、無線LANによるインターネットアクセスが適している。無線LANであればユーザーは、ボートで都市を横断して通勤する際にも、インターネットにアクセスできるからだ。

 先進国の都市であれば無線LANのブランド「Wi-Fi」のネットワークが整備されていると考えられるが、企業によってはWi-Fiよりも信頼できるネットワークを求めてFWAに行きつく場合がある。実際、運河沿いの都市でFWAの採用は徐々に拡大している。


 第4回はFWAのメリットを各産業界がどのように得られるかを紹介する。

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