5Gが扱うミリ波はサブ6に比べて扱いが難しいことから、活用が遅れている。調査会社のIDTechExはミリ波の用途を3つ挙げて分析し、それぞれの現状と課題を評価した。
調査会社のIDTechExは24GHz以上の周波数帯で動作する電波を「ミリ波」と定義し、ミリ波を利用した「5G」(第5世代移動通信システム)が、現状では基地局の設置に必要な投資額に見合うほどのメリットはないと指摘する。
IDTechExは調査レポート「5G Market 2023-2033: Technology, Trends, Forecasts, Players」で、ミリ波の5Gの主要用途を3つにまとめた。本稿は2つ目と3つ目の用途と課題を説明する。
通信事業者の固定通信網とエンドユーザー間を無線で接続する「固定無線アクセス」(FWA:Fixed Wireless Access)は、家庭や企業に無線インターネットアクセスを提供することができる。
IDTechExはFWAについて有線通信と比較して、導入にかかる時間が短く、インフラのコストが安く、導入が容易だと評価した。同社は、2023年に通信機器ベンダーEricssonとマレーシア政府が設立した5G普及のための事業体Digital Nasional Berhad(DNB)が実施した取り組みの成果を強調する。その取り組みは、見通し内通信において、11.2キロ離れた距離間のミリ波通信で、最大1Gbpsの通信速度を記録した。
FWAは遠隔地や地方、光ファイバーケーブルの敷設が困難な地域に適したサービスとして、通信事業者から期待されている。例えば、インドの通信事業者Reliance Jio Infocommは、最終的に1億カ所をFWAで接続することを目指している。
ただしIDTechExは、ミリ波の5Gの普及を妨げる要因として、エンドユーザーの敷地内にある通信設備のCPE(顧客構内設備)の価格を指摘している。Reliance Jio InfocommのFWAサービスを利用するには1台200〜300ドルのCPEが必要になるため、光ファイバーによる通信サービスを利用できなかったほとんどのエンドユーザーにとって手が届かない価格であると、IDTechExは分析する。
IDTechExは、企業が自営ネットワークとして5Gを構内で運用する「プライベート5G」におけるミリ波活用の動向について、複数の製造業界関係者へのインタビューから評価した。
その結果、生産ラインで高解像度カメラ付きロボットを用いるような、業務遂行するために映像や画像を迅速にアップロードする必要がある場合にのみ、製造業者はミリ波を採用するとした。ミリ波で通信するには、障害物の少ない見通し内通信の確保が必要になる。そのため、5Gを採用する工場にとっては、基本的にはミリ波よりも、6GHz帯以下の「サブ6」の方が好ましい選択肢だとIDTechExは分析している。
IDTechExは、2026年までに企業が導入する5Gの比率を、サブ6が8〜9割、ミリ波が1〜2割程度になると予測している。
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