2023年07月26日 07時15分 公開
特集/連載

5Gの鍵「ミリ波」だからできる“3つの用途”を解説5Gのミリ波普及の課題は【前編】

「5G」(第5世代移動通信システム)が英国で正式に商用化してから、2023年現在で4年が経過した。ミリ波を用いる5Gは通信速度や遅延にメリットがあるものの、普及するには課題がある。

[Joe O’HalloranTechTarget]

 「5G」(第5世代移動通信システム)で使う電波は6GHz帯以下の「サブ6」、24GHz帯以上など高周波数帯の「ミリ波」の2つに分類される。どの周波数帯からミリ波として扱うかは、国や組織によって異なるが、調査会社IDTechExは24GHz以上の周波数帯の電波をミリ波として定義している。

 2023年現在、5Gの導入事例はほとんどサブ6によるものだ。IDTechExは、ミリ波はサブ6の電波と比べて、データ伝送速度の速さ、レイテンシ(通信の遅延)の低さ、帯域幅の広さといった長所はあるものの、基地局の設置に必要な投資額に見合うほどのメリットは現状ではないと報告している。ミリ波を用いた5Gは現状で何に使えて、何が課題になっているのか。

「ミリ波」だからこそ可能な“3つの用途”は?

 IDTechExは、現状はミリ波による5Gは基地局の設置に必要な投資額に見合うほどのメリットはないと指摘。同社は調査レポート「5G Market 2023-2033: Technology, Trends, Forecasts, Players」で、その根拠を示している。

 5Gのミリ波には、サブ6と比べたときに、通信距離の短さや電波干渉を受けやすいといった物理的な特性に由来する弱点がある。IDTechExはそれ以外にも、重要な課題があると指摘する。その一つが、導入の難しさとコストを埋め合わせるほどのメリットのある用途がまだ存在しないことだ。慎重に検討を進め、投資に見合う用途を特定し、優先すべきだとIDTechExは指摘する。

 IDTechExによれば、ミリ波は2023年現在、3つの用途で主に使用されていると分析する。いずれの用途も、通信事業者が安定して収益を得るには課題が存在している。

用途1.屋内外の無線ネットワークが混雑しているエリアでの通信

 IDTechExは、スタジアムや、複数の輸送手段や交通手段が集中した交通ハブなど、人が密集する無線ネットワーク混雑エリアで、屋内外を問わず、帯域幅の広い無線接続が必要とされていると分析している。そうした無線ネットワーク混雑エリアでは、屋内外を問わず、一定の通信速度が出る無線接続が必要とされている。

 この用途は、5Gが商用化している全ての国に共通すると想定できるほど一般的なものだ。ただし、混雑エリアでもつながるというメリットを、収益につなげるのは通信事業者にとって簡単ではない。

 まず、「4G」(第4世代移動通信システム)から5Gにアップグレードしたところで、エンドユーザーの数や通信料金はあまり変わらないため、収益を増やすことは困難だ。イベント用に5Gのミリ波を利用できるサービスを販売するというビジネスが考えられるが、IDTechExはこのビジネスはあまり現実的ではないと指摘する。

 この用途では、エンドユーザーが5Gに接続できる端末を持っている必要があるが、5G用の端末を流通させるエコシステム(協業や協力の体制)は未成熟だ。不定期のイベントでミリ波を利用するためだけに、エンドユーザーに5Gミリ波用の端末を購入したいと思わせるには、かなり特別な体験が必要になる


 後編は第2、第3の用途を詳しく分析して紹介する。

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