5Gの「ミリ波」を使ったFWAは光ファイバーより使えるか?5G FWAへの期待と現状【第1回】

インターネット接続の方法として、従来の有線ケーブルによる接続ではなく、5Gなどの無線を利用した「固定無線アクセス」(FWA)が注目を集めている。FWAはどのような仕組みなのか。

2023年10月18日 05時00分 公開
[Venus KohliTechTarget]

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 通信事業者は従来、ユーザーへのインターネット接続を提供するために、自社の中継網とユーザー宅内の「CPE」(宅内設置機器)を同軸ケーブルや光ファイバーといった有線ケーブルで結んでいた。近年、有線部分を無線に置き換えた「固定無線アクセス」(FWA)が世界各国で広がっている。

 特に、FWAの無線部分に「5G」(第5世代移動体通信システム)を採用した「5G FWA」には期待が集まっている。通信機器ベンダーのNokiaやSamsung Electronicsが5G FWAで約10キロの距離を2Gbps以上でデータ伝送するなど、光ファイバーにも劣らない通信速度を実現している。FWAの仕組みを解説する。

FWAの仕組みは? 無線でも安定するのか

 ユーザーがインターネットに接続するためには、通信事業者と契約し、通信事業者のインフラを経由する必要がある。固定無線アクセス(FWA)はユーザーと通信事業者のインフラを、無線で接続するものだ。無線なのに“固定”という単語が使われるのは、無線で通信するインフラである基地局と、ユーザー宅内に設置する「CPE」(宅内設置機器)の場所が固定されているからだ。

 無線は天候や障害物の影響を受けやすく、有線よりもネットワークが不安定になりやすいと懸念する人もいるだろう。だが通信事業者はCPEを複数設置して冗長化する他、近年のFWA用の送受信装置には以下の技術が組み込んであるため、あまり心配は要らない。

  • MIMO(Multiple Input Multiple Output)
    • 送信側と受信側で複数の通信アンテナを同時に利用して通信する技術。データの伝送経路を複数用意し、伝送エラーを減らす。
  • ビームフォーミング
    • アンテナから出る電波の方向や出力を調整して特定の方向へ集中させる技術。受信機のある方向へ電波を集中させることで電波強度が高まる他、他の電波からの干渉を抑えることができる。

 近年、「ミリ波」を用いた5G FWAが広がっている。ミリ波は5Gが利用する電波のうち24GHz帯以上の電波を指し、「4G」(第4世代移動体通信システム)が使う6GHz帯以下の周波数の電波に比べて、遮蔽(しゃへい)物の後ろまで電波が回り込みにくい特性がある。しかし、上記の技術やアンテナ性能の改善により、ミリ波の5G FWAも商用利用できる水準になってきている。


 第2回はFWAのコストや通信品質の特徴を解説する。

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