システム統合とクラウド化を推し進めた保険会社Allianz PNB Lifeは、保険契約書の発行時間を劇的に短縮した。速度を重視しつつ顧客データの安全性を確保できるようになった、プロジェクトの詳細と効果は。
顧客の個人情報を扱う保険業界では、顧客データの保護が重要であると同時に、データを活用したサービス提供といったデジタル化の推進が急務となっている。フィリピンの生命保険会社Allianz PNB Lifeは、顧客体験の向上と新商品の迅速な市場投入を実現するため、ITサービスベンダーDXC Technologyのクラウド型健康保険契約管理システム「DXC Assure Integral」を導入した。スピードとセキュリティを両立したAllianz PNB Lifeのクラウド化事例を紹介する。
DXC Assure Integralの導入によって、Allianz PNB Lifeは新商品の市場投入時間を30%短縮するとともに、顧客が保険契約書類を受け取るまでの時間を従来の数日から5分に大幅に短縮した。
DXC Technologyのエンジニアと専門家は、6カ月間にわたるプロジェクトを通じて、Allianz PNB Lifeの12件の異なるシステムを統合した。これはAllianz PNB Lifeの業務変革とモダナイゼーション(近代化)の一環として実施されたものだ。
Allianz PNB Lifeのアジア太平洋地域(APAC)最高執行責任者であるテー・キム・レン氏は、「このプロジェクトは期日内かつ予算内で中核システムの導入を完了させ、社内の最速記録を打ち立てた」と説明する。レン氏は、顧客が数分で保険契約書類を受け取れるようになったことに言及し、「すでにサービスレベルの向上を実感している」と述べる。同時に、「スピードだけではなく顧客データの安全確保にも全力を注いでいる」とも話す。
保険業界はリスク評価、保険料の算定、保険金の支払いといったプロセスにおいてデータに大きく依存している。DXC Technologyによると、DXC Assure IntegralはAllianz PNB Lifeの厳格な要件を満たす、多角的なデータ管理とセキュリティ機能を備えている。
2025年2月時点で、DXC Technologyのサービスは10億件以上の保険契約を管理し、世界の保険料の10%を処理している。世界の主要保険会社25社中21社にサービスを提供中だ。同社の保険ソフトウェアおよびビジネスプロセスサービス担当マネージングディレクターのレイ・オーガスト氏は、「大手基幹保険システムベンダーとして、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)に寄り添い、支援することに注力している」と語る。
金融業界の調査企業CelentでAPAC保険テクノロジー調査アドバイザー兼シニアアナリストを務めるマックス・アン氏によると、APACの保険会社が2025年の成長に向けて重視している要素はIT費用削減、競争優位性、サイバーセキュリティ、データ保護だ。「DXC Assure Integralは、APACの保険会社に適したクラウドサービスだ」とアン氏は述べる。
APACの保険会社は、クラウドサービスやAI(人工知能)技術を活用した業務変革を加速させており、保険引き受け業務(申し込みの審査や保険状況の調整、契約可否判断などの業務)などの業務プロセスの改善や、顧客対応の強化を進めている。
香港の保険会社Prudentialはシンガポールに「Prudential AI Lab」を設立し、AI技術活用に関する従業員のアイデアを試せるようにした。カナダを本拠地とする保険会社Manufacturers Life Insurance(Manulife)は、生成AI(画像やテキストを自動生成するAI技術)を活用して保険代理店が顧客に合わせた保険を提案できるよう支援している。アジア全域で事業を展開する保険会社FWD Group Holdingsは、アプリケーションの97%をクラウドサービスに移行した。DevOps(開発と運用の融合)や継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー(CI/CD)を採用し、市場の変化に迅速に順応できる体制を整えている。
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