“プライベートクラウドを使う保険会社”がパブリッククラウドを捨てなかった訳クラウド投資に動く保険会社【第2回】

シンガポールの保険会社Great Easternは、クラウドインフラへの投資を進め、独自のプライベートクラウドを構築した。その理由とは。どのような効果があり、今後は何を変えるのか。

2022年12月08日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 金融機関がクラウドインフラへの投資を進めている。シンガポールの生命損害保険会社Great Eastern Holdings(以下、Great Eastern)もそのうちの一社だ。同社はどの技術に投資し、クラウドインフラで何を実現しようとしているのか。

プライベートクラウドを使う理由とパブリッククラウドの見方

 Great Easternが投資するのは、独自のプライベートクラウド(リソース専有型の利用形態)とコンテナだ。同社がクラウドインフラの利用に着手し始めた頃はパブリッククラウド(リソース共有型の利用形態)の利用に関する規制が不透明だったため、同社はプライベートクラウドを選択した。

 「プライベートクラウドで運用中のシステムは、いつでもパブリッククラウドでの運用に切り替えることができる」と話すのは、Great EasternでITグループのマネージングディレクターを務めるゲイリー・テー氏だ。「プライベートクラウドとパブリッククラウドクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドでの運用も視野に入れている」(テー氏)

 こうしたGreat Easternのプライベートクラウドへの投資が実を結び、同社は需要の増加に合わせてITインフラを拡張できるようになった。同社の保険商品の中では、契約満了後や解約時に顧客がまとまったお金を受け取れる貯蓄型保険プランが人気で、契約数が他の商品の何倍にも上る可能性がある。「クラウドサービスを使えば、簡単に新しいコンテナを立ち上げて需要に迅速に対処できる」とテー氏は語る。

 他にもGreat Easternは、クラウドインフラへの移行によりハードウェア機器に対する投資額を33%削減した他、保険数理モデリング(保険リスクの評価計算)用のソフトウェア開発を迅速化することもできた。「アクチュアリー(保険数理士)チームは、早ければ1週間以内に保険商品をモデリングし、商品として販売できるようになった」(テー氏)

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...

news047.png

【Googleが公式見解を発表】中古ドメインを絶対に使ってはいけない理由とは?
Googleが中古ドメインの不正利用を禁止を公式に発表しました。その理由や今後の対応につ...

news115.jpg

「TikTok禁止法案」に米大統領が署名 気になるこれからにまつわる5つの疑問
米連邦上院が、安全保障上の理由からTikTokの米国事業の売却を要求する法案を可決し、バ...