クラウドサービス活用の鍵は“システムを使う人”にあり英国組織のクラウド移行とバックオフィス改革【中編】

英国の金融オンブズマンサービスは、バックオフィスで使うシステムのクラウドサービス移行を実施した。同機関がクラウドサービスのメリットを引き出すために進める施策とは。

2022年12月08日 05時00分 公開
[Karl FlindersTechTarget]

 英国の金融ADR(裁判外紛争解決手続き)運営機関である金融オンブズマンサービス(FOS:Financial Ombudsman Service)は、クラウドサービス型の人事(HR)システムと財務システムを導入した。同機関はこのシステムを足掛かりとし、バックオフィス(人事、経理、総務などの管理部門)全体のシステム刷新と働き方の変革を目指す。

 FOSがクラウドサービスへのシステム移行に当たって重視するのが「システムを使う人」だ。どのような取り組みを進めるのか。

「システムを使う人」を重視する訳

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 FOSは、消費者と金融サービスプロバイダー間の法的なトラブルを解決することを目的に、2001年に英国会議員が設立した機関だ。FOSのサービスの利用者は毎年100万人以上に上る。

 2021年11月、FOSはERP(統合業務)ベンダーWorkdayのHRシステムと財務システムの導入を完了した。ただしこの導入は、計画の半分が完了したに過ぎない。FOSで最高情報責任者(CIO)を務めるニコラ・ワダム氏は「導入が悪い方に転ぶ可能性も当然ある。メリットを享受する最適な方法を探る必要がある」と語る。

 FOSでWorkday導入によるメリットを享受するのは、以下3つのグループに属する従業員だ。

  • 財務部門
  • 人事部門
  • 管理職

 財務部門と人事部門の従業員はWorkdayのシステムを利用することで、作業時間が短縮する。手作業が減る他、通常2人がかりで実施するダブルチェックの業務を1人で終わらせることが可能となる。

 管理者は新人研修や雇用契約の終了、査定業務といった用途にWorkdayのシステムを活用できる。従業員や面接の応募者について、従来より多くの情報を確認することもできる。

 FOSはWorkdayのさらなる活用を目指し、管理者に対してシステムの教育を実施する。重視するのは、管理者がWorkdayのシステムを用いてどう行動を起こせるかだ。「管理者の理解促進をサポートし、適切なガイダンスを提供する」とワダム氏は話す。

 「全ての従業員がWorkdayを使用できるようにすること」をFOSは重視する。従業員はこれまで、さまざまな場所に散在したデータに異なるシステムを用いてアクセスしていた。従来のシステムを使用してきた従業員にとって、新システムへの移行は骨の折れる作業だ。ただしワダム氏は「従業員が新しい技術やシステムを使い始めれば、目には見えにくいが便利な機能に気付くことができる」と言う。

 Workdayのシステムにはすぐに利用可能な機能が豊富にあるが、同氏が重要だと強調するのは、その「真の価値」を見つけ出すことだ。

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