進まない“データセンターの環境対策” 建設許可が出ないリスクも浮き彫りに変化に迫られるデータセンターの実態【第1回】

データセンター設計の認定機関が実施した調査が焦点を当てたのは、データセンター事業者に求められる、ある対策だ。データセンター事業者は何に取り組む必要があり、何が足りていないのか。

2022年12月07日 05時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 データセンター設計の認定機関Uptime Instituteは、データセンターに関する年次レポート「The Uptime Institute Global Data Center Survey 2022」を2022年9月に公表した。データセンターを運用する事業者が、炭素排出量や水の使用量を含めて、自社施設が環境へ及ぼす影響について適切に把握できていない状況が明らかになった。同機関はこの現状に警鐘を鳴らす。データセンターを持つ事業者は、何に取り組めばいいのか。

データセンター建設ができないリスクも

 Uptime Instituteは、世界中のデータセンターのオーナーや事業者約800人と、データセンターのサプライヤーや設計者、アドバイザー約700人を対象に、2022年前半に調査を実施した。

 レポートによると、データセンター施設の炭素排出量と使用水量の統計を作成し、報告している事業者は、それぞれ37%と39%だった。炭素排出量の報告している事業者のうち、「Scope 1」(直接排出量)と「Scope 2」(間接排出量)のデータを算定していたのはわずか17%、Scope 1とScope 2に加えて「Scope 3」(その他の排出量)のデータを算定していたのは12%に過ぎなかった。Scope 1、Scope 2、Scope 3はそれぞれ、GHG(温室効果ガス)排出量の国際的な算定基準「GHGプロトコル」が定める算定区分を指す。

 一方で、調査に参加した事業者のうち63% が、2022年から5年以内に、事業を展開する地域の管轄当局から、環境負荷に関するデータの公表が義務付けられると予測していた。

 レポートは、炭素排出量が企業の主要な懸念事項となる可能性があると予測する。世界中で施行される新しい法律や規則の下で、企業やその顧客は、環境負荷に関するデータの報告を求められるようになると考えられるからだ。

 Uptime Instituteはデータセンター事業者に対し、法規制によって義務付けられる前に、炭素排出量や使用水量に関するデータの報告に着手するよう助言する。データセンター建設の認可を判断する際、この種のデータが利用されることが珍しくなくなっているためだ。

 データセンターにおける使用水量を最小限に抑えるか、ほぼゼロになるよう設計されている場合に限り、自治体がデータセンター開発を認可する動きが広がってくるとUptime Instituteは予測する。環境関連の法規制は、データセンターの施設設計や使用する製品選定に強い影響を与える。水をほぼ使用しない、または一切使用しない冷却設備の使用が義務付けられる可能性もあると、同機関は指摘する。

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