OpenAIがソフトバンクなどから400億ドルの資金を調達することが分かった。一方、同社への評価の高さに疑問を呈する専門家がいる。何が問題なのか。
2025年3月31日(現地時間)、OpenAIは400億ドルの資金調達を実施し、評価額は3000億ドルに上ったことを明らかにした。一方、同社に対する評価の高さを疑問視する専門家がいる。専門家が指摘する懸念点とは。
400億ドルの資金調達を主導するのはソフトバンクだ。同社が300億ドルを、残る100億ドルをOpenAIの支援企業であり提携先でもあるMicrosoftをはじめ、ベンチャーキャピタルThrive Capital、資産管理会社Coatue Management、投資会社Altimeter Capital Managementが拠出する。
ただし、2025年3月時点で確定しているのは100億ドルの投資のみだ。OpenAIが2025年12月31日までに組織再編を実施できれば、ソフトバンクは追加で300億ドルを投資する意向を示している。
OpenAIによると、この資金調達の目的は「汎用(はんよう)人工知能」(AGI:人間の知能を再現した「真の人工知能〈AI〉」)の開発を支援することだ。さらに、OpenAIとソフトバンクは2025年1月、AI強化プロジェクト「Stargate」で提携することを発表した。米国でAI専用のデータセンターに5000億ドルを投資する計画だ。
OpenAIの「ChatGPT」は生成AIブームの火付け役となった。同社のCEO、サム・アルトマン氏によると、ChatGPTは2022年11月30日の公開から5日間で100万人のユーザーを獲得し、2025年2月には週間アクティブユーザー数が4億人に達している。
アドバイザリー企業Information Services Groupのアナリスト、デビッド・メニンガー氏は、この400億ドルの資金調達はOpenAIがAI市場にもたらす可能性の高さを反映していると述べる。
「OpenAIは、Googleのインターネットトラフィックと競争できる可能性を持つ数少ない企業の一つだ」。メニンガー氏はこう指摘する。この可能性が投資家による企業価値評価の根拠となっているという。
一方で、OpenAIの収益性や生成AI競争での優位性の確保について、疑問を投げかける専門家がいる。
調査会社The Futurum Groupのアナリスト、デビッド・ニコルソン氏は、「OpenAIが提供するサービスのROI(投資対効果)はまだ見えていない」と話す。「この投資に合理性があるとすれば、将来的に非常に価値のあるものになるという賭けに、さらに賭けを重ねているということだけだ」(ニコルソン氏)
一方、「中国のAIスタートアップDeepSeekやリーズニングモデル(reasoning model)の登場など、技術革新は進むものの、最終的にはOpenAI、その競合であるAnthropic、が生成AI市場の勝者になる」ともニコルソン氏は言い添える。
OpenAIは2025年3月25日(現地時間)、マルチモーダルモデル「GPT-4o」を使った画像生成機能を改善し、ChatGPTに統合したと発表した。ニコルソン氏は、この動きによってChatGPTのユーザー数が増加することと、3000億ドルという評価額との相関関係は示されていないと指摘する。
「最終的に収益を確保するためには、サービスの開発コストはいくらなのか、エンドユーザーはそのサービスにいくら支払う意思があるのか、これを明示できる必要がある」。ニコルソン氏はこう述べ、続けて、「その説明ができる人をまだ見たことがない」と指摘する。
「データのトークン化に必要なエネルギー資源や、技術の急速な発展を考慮すると、将来的にどのように利益を上げられるかを説明するのは困難だ」(ニコルソン氏)
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