「生成AI」は広く企業が利用する技術になると考えられる。ただし生成AIを組み込むシステムは、従来使われてきた業務システムとは根本的に異なるものになる可能性があるため、企業は幾つかの点に注意が必要だ。
テキストや画像を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)を企業がデータセンターで実行するとなると、従来のシステムとは異なる幾つかの点に配慮する必要がある。サーバラックや電源などデータセンター設備を手掛けるVertiv Groupでアプリケーションエンジニアリング部門のディレクターを務めるスラウォミール・ディジウラ氏は、「生成AIを実行する際の消費電力を正確に計算した人はいないため、設備に求められる要件はまだ不確かだ」と警告する。
暗号資産(仮想通貨)のマイニング(暗号資産の取引内容を承認し、その対価として暗号資産を得ること)を禁止した国が抱いていた懸念と、生成AIの導入に伴う懸念は似ているとディジウラ氏は指摘する。具体的に、企業が生成AIを導入する際に考慮すべき点としてディジウラ氏が挙げるのは、以下の通りだ。
一方で「アプリケーションとインフラ管理者のスキルを高めるために生成AIを利用できる可能性がある」とディジウラ氏は語る。
「生成AIを扱うデータセンターでは、リソース使用量やインフラの管理方法、セキュリティ対策を見直す必要がある」。英国のセキュリティベンダーNCC Groupでチーフサイエンティストを務めるクリス・アンリー氏はそう述べる。
アンリー氏によれば、AI技術を扱うデータセンターの構成は、他の業務システムに適したデータセンターの構成とは基本的に異なる。まず、生成AIの構築に必要なデータ処理能力を備えたインフラを実現するには、大規模な分散ストレージシステムを用意する必要がある。生成AIのアプリケーションは1台のサーバだけでは十分に実行できない場合があり、複数のGPUを使ってアプリケーションの負荷を分散させることが必要になる点も考慮する必要がある。サーバの冷却方法や電力の供給方法、ネットワーク構成なども、AI技術の利用を前提にした設計する必要がある。「データセンターのあらゆる要素を再考しなければならない」と同氏は語る。
中編は、生成AIがデータセンターのセキュリティやエンジニアに与える影響を深堀りする。
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