「エンジニアがやる気をなくす」“4つの理由”開発現場にはびこる恐怖の文化

エンジニアは職場でどのような悩みや不満を抱えているのか。調査で見えた4つの課題と対策を踏まえて、より生産性の高い職場をつくるためのヒントを探る。

2024年05月20日 08時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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開発プロセス | DevOps


 高度なスキルを持つエンジニアでも、ストレスや不満がたまる職場環境ではやる気を失い、本来のパフォーマンスを発揮できない可能性がある。どういった要因がエンジニアのやる気をそいでしまうのか。

 本稿は、エンジニアを対象とした調査結果と専門家の意見を基に、エンジニアが職場で抱える4つの悩みと、“働きやすい開発現場”を実現するためのヒントを探る。

エンジニアが職場で抱える“4つの苦悩”

 エンジニア兼コンピュータ科学者でコンサルティング企業EngpraxのCEOであるジュネード・アリ氏は2024年1月、レポート「The dark side of software development」を発表した。レポートの内容は、Engpraxが2023年10月にソフトウェアエンジニア280人を対象に実施した調査に基づいている。

 レポートと調査からは、開発現場が抱える懸念として大きく4つが浮かび上がった。

1.心理的安全性の欠如

 職場における不正行為を疑うエンジニアは半数以上(53%)に上った。具体的な不正行為としては以下が挙げられる。なお、これらの行為を意図的に隠していることも不正行為とみなしている。

  • 職業上の基準への違反、過失
  • 贈収賄や詐欺などの犯罪行為
  • 健康や安全性に対するリスク
  • 環境破壊
  • 差別など法的義務違反

 回答者のうち116人が雇用主に不正行為を告発したが、そのうち75%は「昇進や昇給の拒否、ハラスメントやいじめ、これまでとは異なる処遇、解雇といった報復を受けた」という。

 問題の背景には、企業が「声を挙げる人材」の雇用を避ける状況と、その結果として醸成される「声が挙がりづらい文化」がある。つまり、不正行為の存在を認めながらも報告しない集団心理「傍観者効果」が働いている状態だ。

 アリ氏は、「エンジニアの心理的安全性が欠如しており、明らかに監視や精査のシステムを導入する必要がある状況だ」と指摘している。

2.仕事に対する価値観のギャップ

 エンジニアが仕事で大切にしている価値観について、回答が多かったのは「自身や家族の生活費を稼ぐこと」(52%)、「信頼性の高い仕事をすること」(51%)、「データセキュリティを確保すること」(47%)などだった。回答が最も少なかったのは「仕事を素早く遂行すること」(33%)だった。

 過半数のエンジニアが仕事における信頼性を重視する一方で、71%の回答者は「職場で使用するソフトウェアの信頼性を懸念している」と答えている。2021年6月に実施した前回調査ではこの割合は57%だった。この2年で状況が悪化していると言える。

3.不適切なパフォーマンス指標

 GoogleのDORA(DevOps Research and Assessment)チームは、開発チームの生産性を測定する主要な指標として、以下4つを提唱する。

  • デプロイ(配備)の頻度
    • 新機能や修正を本番環境に実装できる頻度
  • 変更のリードタイム
    • ソースコードを作成してから本番環境で稼働するまでの時間
  • 平均復元時間
    • 障害が発生した際にシステムを正常な状態に復旧するまでの平均時間
  • 変更障害率
    • デプロイが原因となって発生する、本番環境での障害の割合

 こうしたDORA指標は個人の能力とある程度の相関しているものの、その価値観や判断基準なども含めて測れるものではない。開発するソフトウェアの規模や開発ツール、業界によってリスクとリターンのバランスは変化するが、DORAはその点を考慮していないからだ。

 このような理由から、評価指標としてDORA以外の自社に合った指標を採用すべきだとアリ氏は警告する。DORA指標を過度に重視した結果、エンジニアの専門的判断や他のメリットを犠牲にするリスクもあるからだ。

4.燃え尽き症候群の発症

 開発者の“燃え尽き症候群”は、チームメンバー間の考え方の違いに起因する可能性がある。アリ氏は自身の経験を踏まえて、「チームの中には、リスクに対して寛容、つまりリスクを取りやすいメンバーがいる」と話す。このようなメンバーの存在は、他のメンバーに負担をかけてしまう危険性がある。物事があまりにも早く進んだ場合、他のメンバーが対処しなければならなくなるからだ。

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