NVIDIAは、AI向けGPUの強い需要を背景に、好調な業績を継続している。2025年後半には、GPUアーキテクチャ「Blackwell」のさらに高性能なバージョンを投入する計画も控えている。同社の事業は今後も順調に進むのか。
GPU(グラフィックス処理装置)ベンダーNVIDIAの決算報告によると、AI(人工知能)コンピューティングの需要は依然として強く、減速の兆しは見られない。NVIDIAは、2025年後半にGPUアーキテクチャ「Blackwell」の強化版を投入し、2026年にも次世代AIチップの発表を計画している。
NVIDIAの2025年度第4四半期(2024年11~2025年1月)の売上高は約393億ドルとなり、前年比78%増となった。そのうち約356億ドルはデータセンター向け製品の収益が占めており、2024年12月初旬にリリースされたばかりのBlackwellは約110億ドルの収益を上げた。
一方でアナリストは、データセンターインフラに数百億ドル規模の投資を計画しているクラウドサービスベンダーのAI関連投資が、今後もNVIDIA製品に向かうかどうかに注目している。
中国のAIスタートアップDeepSeekが、性能が最新GPUに劣るプロセッサを使用して高精度なAIモデルを開発したことから、NVIDIAの最新製品への投資を抑制する可能性もあると一部のアナリストは見ている。
「Amazon Web Services」(AWS)や「Google Cloud Platform」(GCP)、「Microsoft Azure」「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)などのクラウドサービス群が、NVIDIAのデータセンター向け製品の売上高の相当な部分を占めるという。これらの主要クラウドベンダーは、BlackwellとCPU「Grace」を組み合わせた製品を採用し始めている。
NVIDIAは2025年後半に、Blackwellの次期バージョン「Blackwell Ultra」を採用した製品を投入する計画だと、CEOのジェンスン・フアン氏は明らかにした。前世代のGPUアーキテクチャ「Hopper」からBlackwellへの移行には困難が伴ったが、BlackwellからBlackwell Ultraへの移行はよりスムーズになるとフアン氏は見込む。
「HopperからBlackwellへの移行は、チップ製造を担う半導体受託製造大手のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が期待以上のスピードで生産能力を拡大したことで助けられた」と、米Informa TechTargetの調査部門Omdiaのアナリスト、アレクサンダー・ハロウェル氏は指摘する。
NVIDIAは、2026年にBlackwellの後継となる新しいGPUアーキテクチャ「Vera Rubin」を発表する計画だ。Vera Rubinは、CPU「Vera」とGPU「Rubin」で構成され、RubinはTSMCの3ナノプロセスといった最先端の技術で製造される。
NVIDIAの最新技術が提供されない可能性が高い国の一つが中国だ。米国政府が2022年に対中半導体輸出規制を開始して以来、NVIDIAの中国向け売上高は半減しているとフアン氏は述べる。NVIDIAは中国向けに性能を抑えたAIチップ「H20」を開発している。
米国政府が米国外で製造された半導体に対する関税を拡大しており、これがNVIDIAの今後の収益に影響を与える可能性もある。NVIDIAのプロセッサは主に台湾のTSMCが製造しているからだ。
「現時点では、まだ不確定要素が多い」とNVIDIAの最高財務責任者(CFO)を務めるコレット・クレス氏は述べる。「米国政府の方針が明確にならない限り、影響の大きさは判断できない」
現在の生成AI(AI:人工知能)に続く次のAI技術の波として、「AIエージェント」「フィジカルAI」「ソブリンAI」が、企業や消費者向けソフトウェアで重要な役割を果たすとフアン氏は予測する。それぞれのAIの特徴は以下の通り。
「これらの技術は、まだ本格的に普及してはいないが、確実に進展している」とフアン氏は述べる。「NVIDIAはこれらの開発の中心にいるため、各分野で活発な動きが起こっていることが見えている」
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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