「AIチップはどう進化するのか」を決めるのはムーアの法則じゃない"あの法則"半導体ベンダーAMDのAI戦略【後編】

AI技術用の半導体製品は、これからどう進化するのか。半導体の進化をけん引してきたムーアの法則は、今後の半導体の進化にも当てはまるのか。AMDのCTOに聞いた。

2024年03月19日 07時30分 公開
[Pratima HarigunaniTechTarget]

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 人工知能(AI)技術の活用拡大を支援するための半導体製品の開発に注力するプロセッサベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)。同社の最高技術責任者(CTO)マーク・ペーパーマスター氏は、AI分野の技術動向をどう見ているのか。

 「18カ月で半導体のトランジスタ集積数が2倍になる」という“ムーアの法則”が半導体製品の進化をけん引してきた。今後はどうなるのか。進化の展望をペーパーマスター氏に聞いた。

ムーアの法則なんかじゃない 「AIチップ」が当てはまるのは"あの法則"

―― ムーアの法則は、AIチップ(AI関連の演算を担う半導体)に適用されるのでしょうか。

ペーパーマスター氏 AI技術の性能はムーアの法則よりも、アーキテクチャの改善やハードウェアとソフトウェアを協調させる設計に大きく左右されると見ている。AIチップにむしろ当てはまるのは「ファントホッフの法則」だ。ファントホッフの法則は、標準がいかに拡張できる設計を可能にするかを示しているものだ。現在、AIチップの標準は事実上、AI技術を開発するベンダーが決めている。標準から大きく離れれば、拡張性が阻害されることになるだろう。

―― AIチップは「クーメイの法則」(コンピュータのエネルギー効率が18カ月で倍増)の影響をどれくらい受けるのでしょうか。

ペーパーマスター氏 クーメイの法則は、ムーアの法則と相関するエネルギー効率向上の経験的観察だった。先に述べたように、AI技術の性能はムーアの法則だけではカバーできない要素に左右される。そのため、クーメイの法則も当てはめにくいと考えている。

―― 技術革新の一つとして、インターコネクト規格「Universal Chiplet Interconnect Express」(UCIe)があります。UCIeの可能性をどう捉えていますか。

ペーパーマスター氏 UCIeは、異なる種類のコンピュートエンジンやアクセラレーターを相互接続し、システムのイノベーションを実現するための重要な要素だ。UCIeによって、システムの性能、コスト、電力効率の最適化を図れる。AI技術の進化はIT業界全体に大きな成長機会をもたらす。しかし、コストがかさむことがネックだ。UCIeを活用すれば、AI技術を利用する際のコスト削減につなげられる。

―― AI技術の進化は、人間の脳の構造を模す技術「ニューロモルフィックコンピューティング」について、どのように進んでいますか。

ペーパーマスター氏 AMDはAI戦略の一環として、ニューロモルフィックコンピューティングの実証実験に注力している。現在、ニューロモルフィックコンピューティング用のGPU(画像処理装置)や小型AIチップの開発を進めているところだ。

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