テープは、2020年代になってもその役割を失うことなく、データ保管用のストレージとして広く使われている。HDDと対比しながら、テープが使われる3つの理由を紹介する。
1960年代から1980年代にかけてデータ保存のための主要なストレージとして使われていた磁気テープ(以下、テープ)は、2020年代の現在でも進化を続けており、健在だ。テープは一般的に考えられている以上に、さまざまな用途で役立つ。以降ではHDDとテープを対比しながら、テープが使われる3つの理由と、主要な用途を紹介する。
テープの1つ目の長所は、記憶容量だ。テープ規格の一つである「LTO」(リニアテープオープン)の場合、テープカートリッジのサイズは幅と高さが10センチ強、厚さが2センチ強ほどで、HDDの3.5型よりも小さい。そのテープカートリッジ1本で保存できる容量は、テープの技術が新しくなるたびに増加している。
例えばLTOの現行の最新規格である「LTO-9」以降の世代の保存容量は以下の通り。LTO-10以降の規格については、LTOを策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(TPCs)のロードマップに基づいている。
テープの規格としては、IBMの独自規格「IBM 3592」もある。IBMのテープライブラリ「TS4500」は、IBM 3592に準拠した製品だ。
テープカートリッジを自動で出し入れするオートローダーやテープライブラリを使用することで、複数本のテープカートリッジの容量をまとめて運用することができる。
テープの2つ目の長所は、データの読み書き時以外ほとんど電力を消費しないことだ。これは通電しておくのが基本のHDDとは異なる。消費電力量を抑制できる特性は、カーボンフットプリント(活動を通じて排出される二酸化炭素量)の削減を目指す企業にとってのメリットになる。
テープがバックアップや長期保存、アーカイブの用途で広く使われているのは、記憶容量や電力消費のメリットがあるからだ。
テープの3つ目の長所は、本番システムとバックアップデータを物理的に隔絶する「エアギャップ」を作れることだ。テープカートリッジをオフサイト(本番稼働中システムと切り離した場所)に移動することで、本番システムが稼働する場所からテープカートリッジのデータにアクセスしにくい状況を作ることができる。これは、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)への対策としても有効だ。テープカートリッジのデータの安全性は、感染したシステムに接続しない限り保たれる。
テープライブラリは、一度に複数のテープカートリッジにデータを書き込むことができるので、本番システムが稼働する場所とオフサイトのコピーを同時に作成することが可能だ。
次回は、多様化しつつあるテープの用途を紹介する。
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