HCI(ハイパーコンバージドインフラ)市場の主要製品「Dell VxRail」と「Nutanix NX」は、根本的な設計思想から詳細な機能まで、さまざまな面で異なる点がある。どちらを選ぶべきか、その判断材料を解説する。
サーバやストレージ、ネットワークにセキュリティなどの各種機能を集約した「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)は、管理対象システムの削減と、それに伴う費用の削減に貢献し得る。システムの導入や運用を簡素化し、容易にする効果も期待できる。調査会社Fortune Business Insightsの予測によると、HCI市場は2032年には614億9000万ドルに達する見込みだ。
本稿は、HCI分野を代表する2つのアプライアンス「Dell VxRail」と「Nutanix NX」を取り上げ、それぞれの特徴を紹介しながら違いを比較する。
Dell VxRailとNutanix NXは、ハードウェアに関する設計思想が異なる。
Dell VxRailは、Dell Technologiesと仮想化ベンダーVMware(2023年にBroadcomが買収)の共同開発によって生まれたアプライアンスで、Dell Technologies製のハードウェアで動作する。Dell Technologiesは、それぞれ異なる用途を想定した5つのVxRailシリーズを展開している。
Nutanixは、Dell VxRailとは異なるアプローチでHCIアプライアンスを構築している。Dell VxRailがDell Technologies製ハードウェアとVMware製ソフトウェアの緊密な連携を基盤とするのに対し、Nutanix NXは構成の自由度を重視している点が特徴だ。Nutanixは自社ブランドの専用HCIアプライアンスを提供する一方で、Cisco Systems、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Intel、Lenovoといった主要サーバベンダーも、Nutanix製ソフトウェアを搭載した製品を提供している。
Dell VxRailとNutanix NXは、想定される主な利用目的が異なる。
Dell VxRailは基本的にVMware製ソフトウェア用に設計されているが、その用途は単純なサーバ仮想化にとどまらない。プライベートクラウド構築製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)、インメモリデータベース「SAP HANA」、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」など、より高度なシステム基盤としても活用できる。Dell Technologiesは、ビジネスプロセスへの機械学習の導入やVDIの構築を検討している企業にもVxRailを提案している。
Nutanix NXは、特定の業種向けではなく汎用(はんよう)的なHCIアプライアンスと位置付けることができる。
Dell Technologies製ハードウェアとVMware製ソフトウェアを密接に組み合わせるDell VxRailのアプローチとは異なり、NutanixはソフトウェアによってHCIを実現するソフトウェア定義方式を採用している。これによって、企業はNutanix製アプライアンスだけではなく、他ベンダーが提供するハードウェアを使うことでもHCIを構築可能になる。
Nutanix NXは、Nutanixの「Nutanix Acropolis Hypervisor」(Nutanix AHV)に加えて「VMware vSphere」「Microsoft Hyper-V」など、複数のハイパーバイザーを選択してシステムを構築できる。企業の要件に応じて、これらのハイパーバイザーを使い分けることも可能だ。
企業が選択するハードウェア構成によって、Dell VxRailとNutanix NXの処理性能は変動する。
Dell VxRailにはE/P/V/D/Sの5つのシリーズが存在する。各シリーズは処理性能が異なり、選択可能なハードウェア構成も多様だ。
サードパーティー製アプライアンスに加えて、Nutanixは自社ブランドで約30種類のHCIアプライアンスを提供している。
Nutanix NXは仕様の幅が広い。比較的小規模な構成としては「NX-1120S-G7」がある。このモデルは、CPU「Intel Xeon D」を8コアで1基、最大256GBのメモリを搭載可能だ。ストレージは最大15.36TBのSSDを搭載できる。
より高性能なHCIアプライアンスを求める企業には、「NX-8155-G9」が選択肢になる。このモデルは、それぞれ最大84コアを持つCPU「AMD EPYC 9004」を2基搭載する。メモリ容量は最大3TBで、最大184.32TBのオールSSDまたはNVMe接続ストレージを搭載できる。
企業がシステムをクラウドサービスで運用するようになりつつある現在、クラウドサービスとの連携機能はHCIアプライアンスの重要な検討項目だ。
Dell VxRailは、VMware Cloud Foundationと緊密に連携するよう設計されている。これによって管理者は、オンプレミスシステムとクラウドサービスにあるVMを単一のツールセットで一元管理できる。パブリッククラウドとプライベートクラウドにまたがって一貫した運用管理体験を得られのアプローチは、異なるクラウド環境間でのサービスレベル契約(SLA)の統一を容易にする。
クラウドインフラ構築・運用ソフトウェア群「Nutanix Cloud Platform」は、プライベートクラウドかパブリッククラウドかを問わず、クラウドで稼働する全てのアプリケーションとデータを一元的に管理可能だ。異なるクラウド間でのスムーズなアプリケーション移行も支援する。
企業がHCI製品を選定する際、価格と総所有コスト(TCO)は重要な判断基準となる。
Dell Technologiesは、ハードウェア、ソフトウェア、サポートサービスを一体化したアプライアンスとしてDell VxRailを販売している。Dell VxRailはサーバ製品「Dell PowerEdge」と、事前設定済みのVMware製ソフトウェアを基盤としている。管理ソフトウェアDell VxRailの管理ツール「VxRail Manager」は、VMwareの仮想化製品管理ソフトウェア「VMware vCenter」と標準で連携可能だ。
Nutanixはソフトウェア定義方式のHCIを専門に手掛ける。同社の製品は、NutanixのHCI用OS「Acropolis OOS」(AOS)が中核となっている。サーバやハイパーバイザーは、Nutanixから購入することも、サードパーティーベンダーから調達することも可能だ。
HCIアプライアンスの導入を検討する企業は、ベンダーのサポート内容と費用を慎重に評価する必要がある。
Dell Technologiesは、サポートサービス「ProSupport Enterprise Suite」を通じてDell VxRailのサポートを提供している。サポートサービスは、「ProSupport」「ProSupport Plus」「ProSupport One for Data Center」という3段階のレベルから選択可能だ。サポート契約は、Dell Technologiesの営業担当者または認定パートナー経由で締結する。
Nutanixは、自社のハードウェアおよびソフトウェアに対して、2段階のレベルでのサポートを提供している。下位のオプションである「プロダクションサポート」では、24時間365日の技術サポート窓口を利用可能で、優先度1(最重要)の問題に対しては1時間以内の応答を目指す。Nutanix製ハードウェアの場合、プロダクションサポートでは翌営業日の部品交換が提供される。
上位のオプションである「ミッションクリティカルサポート」では、優先度1の問題に対して30分以内の応答を保証する。Nutanix製ハードウェアについては、4時間以内の部品交換オプションも利用可能だ。
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